3Dプリンターに興味があるけれど、一体どんなものが作れてどのように使えば良いのか分からないという人も多いでしょう。
一見ハードルが高そうに見える3Dプリンターですが、家庭でも幅広く活用されている制作ツールなので難しく考える必要はありません。今回は実際に3Dプリンターで作られた作品例を見ながら、作品づくりに役立つ情報も紹介していきます。
3Dプリンターではどんなものを作ることができるのか
3Dプリンターは従来のようにインクを用いて紙へ印刷するのではなく、主に樹脂を用いて立体物を生成するデバイスです。
一般的には以下のようなものを作るのに適しているとされており、既に多くの制作事例を確認することができます。
3Dプリンターで作れるもの①:フィギュア・模型
家庭用の3Dプリンターの用途として代表的なものの1つがフィギュアや模型といったホビー用品です。元々市販品の多くが樹脂製であることから3Dプリンターとの相性が良く、趣味として収集や撮影を楽しんでいた人たちの間で注目が集まりました。
フィギュアや模型を「0から自分でつくる」という楽しみ方が生まれたのは、3Dプリンターの登場によって実現したのです。
フルカラー対応の3Dプリンターを使用すれば、最初から塗装済の完成品を出力することもできます。
3Dプリンターで作れるもの②:ファッションアイテム
3Dプリンターは様々なファッションアイテムも作成可能なため、副業で服飾関係の商品を販売している人や趣味で自作している人にもおすすめです。例えば手軽なものだと指輪・ピアス・ブローチ・ネックレス・ネイルなどが挙げられます。
質感や色味を上手くコントロールできるようになれば、服や靴といったアイテムでもハイクオリティな作品づくりが可能です。
3Dプリンターで作れるもの③:日用品
「あったらいいな」を自作できるという点も3Dプリンターの大きな魅力です。スタンド・小物入れ・フック・ホルダーといった日用品は小型で樹脂製のものが多いため、3Dプリンターでの制作と相性が良いジャンルと言えます。
特にスマホケースは市販品にはない斬新なデザインを手軽に作成できる上、ネットショップでの需要も高いのでおすすめです。
3Dプリンターで作れるもの④:ルアー
釣り愛好家の間では、3Dプリンターでルアーを自作する人も散見されます。設計やサイズの微調整が容易なので、獲物や釣り場環境に合わせたルアーを手軽に用意することが可能です。
ルアーは消耗品的な一面もあり、根がかりなどが原因で紛失してしまうことも珍しくありません。その点でも、3Dプリンターならいつでも再生産できるので安心です。
関連記事:誰でもできる! 簡単3Dプリンターを使ったルアー作り!
3Dプリンターで作れるもの⑤:オブジェ・インテリア
部屋に飾るためのオブジェやインテリアも3Dプリンターの得意分野です。デザインに凝ったおしゃれなものから一風変わったネタものまで、様々な楽しみ方があります。アイデア次第で可能性の幅は無限大と言えるでしょう。
家庭用のプリンターではサイズに限界がありますが、業者に依頼すれば大型の作品づくりも可能です。
3Dプリンターで作れるもの⑥:家
3Dプリンターの利用用途は住宅建築まで視野に入れられています。2023年時点の日本でも既に小規模なグランピングや1LDK程度の小型住宅が実現しているのです。
個人での制作は現実的ではないかも知れませんが、3Dプリンターが秘めているポテンシャルを理解するという意味では印象的な事例と言えます。
関連記事:話題の3Dプリンター住宅とは?メリット・デメリットなどを詳しく解説
3Dプリンターに必要なデータの作り方
3Dプリンターで作品を出力するには、一般的な2Dデータではなく3Dのデザインデータ(3Dデータ)が必要になります。
3Dデータを用意する方法には以下の5つがあるので、作りたいものに合わせて用意しやすい手段を選びましょう。
関連記事:3Dプリンターのデータを作成するには? 5つの方法を徹底解説
3Dデータの作り方①:3DCADソフトを使用する
CADとは「Computer Aide Design」の頭文字を取ったもので、コンピューター上でのデザイン作業を支援するためのツールです。
ワイヤーフレーム・ソリッド・サーフェースの3つが主な表現方法であり、細部まで正確なデザイン設計図を作成できる点が強みとなっています。
複数の部品を組み合わせて完成品を作る場合は正確な採寸が求められるため、3DCADソフトがデータ作成に適していると言えるでしょう。
3Dデータの作り方②:3DCGソフトを使用する
一般的なCG(コンピューターグラフィック)ソフトでも、3Dプリンター用のデータを作成可能です。3DCGソフトでは三角形や四角形を組み合わせる「ポリゴンベース」と、曲面を操作してデザインする「スプラインベース」を用います。
滑らかな丸みを再現できることから、3DCGによるデータ作成はフィギュアや模型を作りたい場合におすすめです。
実物を3Dスキャナーで読み込む
手元にある実物にデザインアレンジを加えたい場合は、3Dスキャナーを使って形状・サイズのデータを取り込むという方法もあります。
3Dスキャナーにはセンサー部分で対象物をなぞる「接触式」と、レーザーを対象物に照射する「非接触式」の2種類があるので覚えておきましょう。
ただし3Dスキャナーは安いものでも数十万円、高性能なものは数百万円程度なので個人では中々手を伸ばしづらいというのも現実です。
3Dスキャンは代行サービスを利用したり、あるいは初めからスキャナー機能が付いた3Dプリンターを検討してみるのも良いでしょう。
手軽な価格でおすすめの3Dスキャナー:EinScan-SE
EinScan-SEは、オートマティックスキャン・フリースキャンの2種類のモードを搭載した卓上型の3Dスキャナーです。
手のひらサイズのフィギュアなどであればターンテーブルに載せることができ、より安定したスキャンを行うことができる固定スキャンが対応可能です。
造形マテリアル | ー |
最大造形サイズ | ー |
積層ピッチ | ー |
3Dデータの作り方④:配布サイトから3Dデータをダウンロードする
3Dデータはインターネット上で公開・配布されている場合もあります。自分でデータを用意するのが難しいようであれば、既存のデータが配布されていないか探してみるのも近道です。
データ公開サイトには有料・無料・国内・海外など様々なものがありますが、作りたいものが特殊な場合はデータが公開されていない可能性があります。
利用規約によってはデータの利用範囲が限定されていることもあるので、著作権については十分注意しておきましょう。
3Dデータの作り方⑤:データ作成サービスへ依頼する
データの自作が難しく配布もされていなくても諦めてしまう必要はありません。3Dデータは作成を代行している業者も多いので、必要な素材を提供すれば依頼することができます。
一般的には作成したいものの写真やイラストの他に、三面図の提出が求められるので留意しておきましょう。それぞれの業者で得意なジャンルが異なるので、公式ホームページなどでデータの制作実績をチェックすることが大切です。
3Dプリンターによって作られた作品5選
ここでは作品づくりのイメージを膨らませるために、実際に3Dプリンターで制作された作品をいくつか紹介します。
3Dプリンターによる作品①:イヤリング
出典:https://www.creema.jp/item/11590044/detail
3Dプリンターを用いれば、市販品では中々見かけない斬新なデザインのアクセサリーも簡単に作ることができます。
直接身に付けるファッションアイテムには金属が使用されるケースも多いため、中にはアレルギー反応が出てしまう人も居るでしょう。ベルトやチェーンといった金属部品も3Dプリンターの樹脂で制作すれば、幅広い人に作品を楽しんでもらえます。
3Dプリンターによる作品②:植木鉢
樹脂制の植木鉢は比較的重量が軽いため持ち運びしやすく、落下や転倒で割れるリスクも低いという利点があります。実用性とデザイン性を兼ね備えているため、園芸が趣味という人におすすめです。
3Dプリンターによる作品③:ラジコン
モーターや配線材以外の主な車体パーツを3Dプリンターで制作した事例です。市販品さながらのメカニカルなデザインもさることながら、最高時速66kmに耐え得る耐久性の高さも見逃せないポイントとなっています。
3Dプリンターによる作品④:フィギュア
出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000241.000019615.html
3Dプリンターによるフィギュア制作は、個人の趣味利用に留まらず企業での活用を模索されています。フルカラー3Dプリンターによる精密な造詣とカラーリングは、手作業とはまた違った風合いが楽しめるでしょう。
3Dプリンターによる作品⑤:住宅
国内で実際に販売された3Dプリンター製住宅の事例です。1LDKながらも50平米の広さが確保されており、耐震性・断熱性・耐火性・耐水性など機能性についても追及されています。
コンクリート造で施工時間は約44時間、水回りが整備されていて販売価格は約550万円です。住宅市場における3Dプリンターの活用にも注目が集まっています。
50平米1LDK・二人世帯向けの3Dプリンター住宅が550万円で販売開始したようです。 44時間30分で施工、水回りも完備してあります。SUUMOジャーナルよりお届けします。 https://t.co/yIsKorzxCY
— 東洋経済オンライン (@Toyokeizai) September 16, 2023
作品づくりにおすすめの3Dプリンター3選
3Dプリンターは多くのメーカーからリリースされていますが、以下では作品づくりにおすすめなものを厳選して3つ紹介します。
作品づくりにおすすめの3Dプリンター①:Adventurer3
FLASHFORGE製の「Adventurer3」は、初めて3Dプリンターを購入するという人におすすめです。380mm×340mm×405mmというサイズ感で重量9kgに抑えられています。もちろん機能面についても妥協がなく、ステンレス製ノズルによる高速加熱で作業時間の短縮を実現しました。
実売5万円前後という手頃さや、フィラメントの取り外しが簡単というのもビギナーにとっては嬉しいポイントです。
造形マテリアル | PLA、ABSなど |
最大造形サイズ | 150×150×150 mm |
積層ピッチ | 0.05mm~0.4mm |
作品づくりにおすすめの3Dプリンター②:Form3+
家庭用としては高額な部類に入りますが、作品のクオリティを求めるのであればFormlabs製の「Form3+」が良いでしょう。Form3+はデスクトップサイズながらも産業レベルの品質と安定感を実現しています。
光造形方式ならではの滑らかな表面を再現でき、主にフィギュアやアクセサリーづくりなどで活躍しています。高い安全性と多種多様な材質に対応するフレキシブルさも兼ね備えており、世界各国に愛用者を抱えるベストセラーです。
造形マテリアル | Standard、Castable、Flexible etc |
最大造形サイズ | 145×145×185 mm |
積層ピッチ | 25〜300 μm |
作品づくりにおすすめの3Dプリンター③:Raise3D Pro3
Raise3D社製の「Pro 3 Series」もハイクオリティな業務用3Dプリンターとして知られています。タッチパネルやAI機能を搭載し、多様なフィラメントに対応するなど高いユーザビリティが特徴です。
日本代理店のサポート体制が充実しているため、トラブルが起きても迅速に対応してもらえます。
造形マテリアル | T-PLA、T-ABS、PETG、PTG、Polyflex、カーボン、木質、etc |
最大造形サイズ | 300×300×300 mm |
積層ピッチ | 0.01〜0.65mm |
3Dプリンターで作品づくりの幅を広げよう
自力で立体物をつくる方法は様々ですが、3Dプリンターの登場・普及によって表現の幅が大きく広がったと言えるでしょう。
「様々なアイディアを手軽に具現化したい」「イメージ通りの作品を高精度でつくりたい」など、作品づくりで抱える悩みの解決には3Dプリンターが有用である可能性があります。
初期費用やランニングコスト、自宅への設置スペースを考慮した上で3Dプリンターの導入も検討してみてください。