昨今、3Dプリンターの精度や機能が進化し、家庭用から産業用まで幅広い製品が登場しています。しかし、適切な機種を選ぶには多くの要素を考慮する必要があります。
そこで、本記事では3Dプリンターの基本から各造形方式の特徴、主要メーカーの比較、そして選び方のポイントまで解説します。初心者からプロまで、自分に最適な3Dプリンターを見つけたい場合は、ぜひ参考にしてください。
家庭用・業務用3Dプリンターの違い
3Dプリンターは、デジタルデータをもとにして立体物を作り出す機器です。従来の製造方法では難しかった複雑な形状やカスタマイズ品を簡単に作れるため、家庭や産業での利用が急速に広がっています。
家庭用と業務用の3Dプリンターに、用途・性能の違いを両者の違いを以下の表にまとめました。
項目 | 家庭用 | 業務用 |
---|---|---|
価格帯 | 数万円~数十万円 | 数百万円~数千万円 |
精度 | 中程度(±0.1mm程度) | 高精度(±0.01mm以下) |
造形サイズ | 小型(20cm程度) | 大型(1m以上も可能) |
素材の種類 | 樹脂系が中心 | 金属・特殊素材も対応 |
用途 | 趣味・教育 | 製品開発・医療・航空宇宙 |
操作性 | 初心者向けの簡易操作 | 専門知識が必要 |
家庭用は趣味や簡易的な試作品作りに適しており、手頃な価格と扱いやすさが魅力です。一方、業務用は高精度・高強度な造形が可能で、製造業や医療など専門分野で活躍しています。
なお、3Dプリンターの基本的な使い方は、次の記事で解説しています。あわせてご覧になり、流れを確認してみてください。
3Dプリンターの造形方式を比較
3Dプリンターの造形方式は多岐にわたり、それぞれに特徴があります。用途や目的に合わせて最適な方式を選ぶことがポイントです。以下の表では、主要な造形方式を強度、造形速度、精度の観点で比較しています。
造形方式 | 強度 | 造形速度 | 精度 |
---|---|---|---|
熱溶解積層方式 | 〇 | 〇 | ▲ |
光造形方式 | ▲ | ▲ | ◎ |
マテリアルジェッティング | 〇 | 〇 | ◎ |
バインダージェッティング | ▲ | ◎ | 〇 |
粉末焼結方式 | ◎ | ▲ | 〇 |
指向性エネルギー堆積法 | ◎ | ▲ | 〇 |
BMD方式 | ◎ | ▲ | 〇 |
シート積層法 | 〇 | ◎ | ▲ |
パウダーベッド方式 | ◎ | ▲ | ◎ |
3Dプリンターに必要なデジタルデータを、3DCADで作成するスキルを習得したい方は未経験でも3DCADを短期間で習得できるカリキュラムが魅力的な以下のようなセミナーがおすすめです。
短期間で基礎から高度なスキルまで習得可能で、受講形式も希望に合わせて選べます。
セミナー名 | BIM・建築 3DCAD Revitセミナー講習 |
---|---|
運営元 | ProSkilll(プロスキル) |
価格(税込) | 41,800円〜 |
開催期間 | 2日間 |
受講形式 | 対面(東京・名古屋・大阪)・ライブウェビナー・eラーニング |
それでは、各方式の特徴を見ていきましょう。
①熱溶解積層方式
熱溶解積層方式(FDM)は最も普及している造形方式で、熱で溶かした樹脂を積層していきます。家庭用から業務用まで幅広く使われており、初心者にも扱いやすい点が特徴です。
メリット | デメリット | 活用事例 |
---|---|---|
|
|
|
②光造形方式
光造形方式(SLA/DLP)は液体樹脂をUVレーザーや光源で硬化させる方式です。非常に高精度な造形が可能で、滑らかな表面仕上がりが特徴です。
メリット | デメリット | 活用事例 |
---|---|---|
|
|
|
③マテリアルジェッティング
マテリアルジェッティングはインクジェットプリンターのように材料を吹き付けて積層する方式です。複数の材料や色を同時に使用できる点が特徴です。
メリット | デメリット | 活用事例 |
---|---|---|
|
|
|
④バインダージェッティング
バインダージェッティングは粉末材料に接着剤を噴射して固める方式です。カラフルな造形物を高速に作れる特徴があります。
メリット | デメリット | 活用事例 |
---|---|---|
|
|
|
⑤粉末焼結方式
粉末焼結方式(SLS)はレーザーで粉末材料を焼結させる方式です。高い強度と耐久性を持つ造形物が作れます。
メリット | デメリット | 活用事例 |
---|---|---|
|
|
|
⑥指向性エネルギー堆積法
指向性エネルギー堆積法(DED)は金属ワイヤーや粉末を溶かしながら積層する方式です。大型の金属部品製造に適しています。
メリット | デメリット | 活用事例 |
---|---|---|
|
|
|
⑦BMD方式
BMD(Bound Metal Deposition)方式は金属粉末を樹脂でバインドした材料を押出し、そのあとに焼結する方式です。比較的手軽に金属造形ができます。
メリット | デメリット | 活用事例 |
---|---|---|
|
|
|
⑧シート積層法
シート積層法(LOM)は紙や金属のシートを切断して積層する方式です。低コストで大型造形が可能な点が特徴です。
メリット | デメリット | 活用事例 |
---|---|---|
|
|
|
⑨パウダーベッド方式
パウダーベッド方式は粉末材料の層にエネルギーを照射して固める方式です。高精度な金属部品の製造に適しています。
メリット | デメリット | 活用事例 |
---|---|---|
|
|
|
3Dプリンターのおすすめ5メーカーを比較
3Dプリンターにはさまざまなメーカーがあります。ここでは、おすすめの5メーカーを比較します。
メーカー | メリット | デメリット |
---|---|---|
Stratasys |
|
|
Creality 3D |
|
|
FLASHFORGE |
|
|
Anker |
|
|
Elegoo |
|
|
各メーカーの特徴を確認し、購入の際に役立ててください。人気の3Dプリンターについては、次の記事でも取りあげています。さまざまな機種を比較したい場合は、ぜひご覧ください。
①Stratasys
Stratasysは3Dプリンター業界の先駆者で、産業用から専門家向けまで幅広い高性能な機種を提供しています。特に航空宇宙や医療分野で高い信頼を得ており、精度と耐久性に妥協のない製品作りが特徴です。
特徴 | 向いている人 |
---|---|
|
|
②Creality 3D
Creality 3Dは手頃な価格と高いカスタマイズ性で人気を集める中国メーカーです。特にEnderシリーズは初心者からプロまで幅広いユーザーに支持されています。
特徴 | 向いている人 |
---|---|
|
|
③FLASHFORGE
FLASHFORGEは使いやすさと安定性を重視した3Dプリンターを提供しています。特に教育機関や初心者向けの機種が充実しており、すぐに造形を始められる点が魅力です。
特徴 | 向いている人 |
---|---|
|
|
④Anker
Ankerは2020年代に3Dプリンター市場に参入した新興メーカーで、高速印刷技術とスマート機能を組み合わせた製品を提供しています。
特徴 | 向いている人 |
---|---|
|
|
⑤Elegoo
Elegooはレジン(光造形)3Dプリンターで知られるメーカーで、特に高精細なモデル造形に強みを持っています。手頃な価格で詳細な造形が可能です。
特徴 | 向いている人 |
---|---|
|
|
3Dプリンターの選び方
さまざまな製品が展開されている3Dプリンターから自分にあうものを選ぶときは、次のポイントを意識してください。
- 造形方式で選ぶ
- 造形可能なサイズを確認する
- 造形素材を確認する
- 対応ソフトを確認する
- 機能性を比較する
- メンテナンスのしやすさを比較する
- 価格を比較する
それぞれを慎重に比較して、自分にあう3Dプリンターを選びましょう。
①造形方式で選ぶ
造形方式は3Dプリンターの性能を左右する重要な要素です。家庭用なら熱溶解積層方式(FDM)が扱いやすく、精密なモデルには光造形方式(SLA/DLP)が適しています。
また、趣味で使うなら汎用性の高いFDMが無難ですが、細かいフィギュア制作ならSLAの方が向いています。業務用途では目的に応じた専門的な方式を検討しましょう。
このように、製品の用途を明確にしてから方式を選んでください。
②造形可能なサイズを確認する
造形可能なサイズについて、小さな機種は場所を取らず安価ですが、大きな造形物は分割して後で組み立てる手間が発生します。また、一般的な家庭用機では20cm立方程度が多いですが、大型モデルでは30cm以上の造形も可能です。
そのため、将来的に作りたいものの最大サイズを想定して余裕を持った選択をしましょう。ほかにも建築模型や大型プロトタイプを作る予定なら、十分な造形エリアの確保も必要です。
③造形素材を確認する
使用できる素材の種類は完成品の品質や用途を決定します。素材ごとに特性が大きく異なるため、目的に合った素材に対応しているか確認が必要です。
素材 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
PLA |
|
|
ABS | 耐熱性と耐衝撃性が高い |
|
PETG |
|
|
TPU/TPE | ゴム状の柔軟性 |
|
ナイロン |
|
|
レジン |
|
|
金属粉末 |
|
|
上表を参考に、素材ごとの特徴を踏まえて、最適なものを選びましょう。
④対応ソフトを確認する
3Dプリンターの使いやすさは対応ソフトウェアに大きく左右されます。種類としては、初心者向けの直感的なソフトから専門家向けの高機能ソフトまでさまざまです。
たとえば、メーカー独自のソフトは使いやすく設定済みですが、汎用ソフトは自由度が高いという特徴があります。また、クラウドベースの新しいソフトは遠隔操作も可能で便利です。
特に初心者は操作画面のわかりやすさや日本語対応の有無も比較する必要があります。
⑤機能性を比較する
便利な機能の有無で使い勝手は大きく変わります。下表では、3Dプリンターの便利な機能を取り上げています。
機能 | 効果 | 重要度 |
---|---|---|
オートレベリング | 造形面の自動調整で失敗を減らす | 初心者に◎ |
フィラメントセンサー | 材料切れを検知して印刷を一時停止 | 長時間印刷に◎ |
停電復旧機能 | 電源トラブル後に印刷再開可能 | 安定性重視に◎ |
タッチスクリーン | 直感的な操作が可能 | 使いやすさ重視に〇 |
Wi-Fi接続 | 遠隔操作・モニタリングが可能 | 利便性重視に〇 |
カメラモニタリング | 印刷状況を遠隔確認できる | 管理重視に〇 |
さまざまな機能を比較して、必要な機能を見極めましょう。
⑥メンテナンスのしやすさを比較する
3Dプリンターは定期的なメンテナンスが必要な精密機器です。部品交換のしやすさや清掃性は長期的に使用するうえで大事になります。
特にノズル詰まりや軸のメンテナンスが簡単にできるモデルは長く使えます。消耗品の入手しやすさも重要で、汎用品が使える機種は維持費を抑えられます。
特に初心者はメンテナンス情報が豊富なメジャーブランドを選ぶと安心です。
⑦価格を比較する
価格は初期費用だけでなく、ランニングコストも含めて考える必要があります。安い機種は部品交換や材料コストが高くなる場合もあるため注意が必要です。
家庭用なら3〜10万円、中級機は10〜30万円、業務用は数十万〜数百万円が相場です。初心者は入門機から始めて、スキルアップに合わせてグレードアップするのがいいでしょう。予算と用途のバランスを考えた選択が大切です。
なお、次の記事では、3Dプリンターのさまざまな製品について価格を比較しています。ぜひ確認し、予算内で購入できそうな製品を比較してみましょう。
3Dプリンター比較のまとめ
3Dプリンターを比較する際は用途や予算、自分の技術レベルに応じて比較しましょう。具体的には、本記事で紹介したように造形方式、サイズ、素材などの観点から比較検討することがポイントです。
初心者は使いやすさと安定性を、専門家は精度と機能性を重視するなど、優先すべきポイントは人それぞれです。自分のニーズに最適な3Dプリンターを見つけ、創造的なものづくりにつなげましょう。