「3Dプリンターで色々な方式があるけど、何が違うの?」と疑問を持つ方も多いでしょう。3Dプリンターには大きく分けて5つの主要な方式があり、作りたい作品によって選ぶべき方式は異なります。
どれだけ精度の高いデータを用意しても、作りたい作品と3Dプリンターの方式が異なれば造形に失敗する可能性も高くなるでしょう。
そこで本記事では、3Dプリンターの概要を簡単に説明し、造形方式の特徴、それぞれの方式に合わせた用途、おすすめの3Dプリンターなど詳しく解説します。
3Dプリンターとは?

3Dプリンターとは、データをもとに立体物を自動で作り出す装置です。パソコンで設計した3Dデータを読み込み、材料を一層ずつ積み重ねていくことで形を作るのが3Dプリンターの特徴です。
3Dプリンターは、切削加工のように削って作るのではなく、必要な部分だけを造形するため、試作や少量生産に向いている技術として注目されています。
3Dプリンター造形方式別の費用相場
3Dプリンターの費用は家庭用や業務用などで費用は異なりますが、方式によっても異なります。今回は業務用3Dプリンターの造形方式における費用相場を紹介しています。
| 造形方式 | 主な価格帯 | 特徴 |
|---|---|---|
| 熱溶解積層方式 | 数万円~200万円 | 最も一般的で安価。材料費が安い |
| 光造形方式 | 26万円~207万円 | 精密で滑らかな仕上がり |
| インクジェット方式 | 400万円~ | カラー造形が可能。最高精度 |
| 粉末焼結方式 | 300万円~数千万円 | 高精度で複雑な形状に対応 |
| 粉末固着方式 | 200万円〜 | 本体価格は高額 |
3Dプリンターの費用相場は、導入目的や求める精度、生産量によって変わります。たとえば、試作品の作成や簡易的な部品製造であれば、比較的安価で運用しやすい熱溶解積層方式が選ばれるケースが多いです。
家庭用3Dプリンターの費用・価格相場については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
3Dプリンターの造形方式と特徴
3Dプリンターには大きく分けて5つの方式があります。まずはそれぞれの特徴を理解しておきましょう。
- 熱溶解積層方式
- 光造形方式
- インクジェット方式
- 粉末焼結方式
- 粉末固着方式
①熱溶解積層方式
熱溶解積層方式(FDM方式)は、フィラメントを熱で溶かし、少しずつ積み重ねて形を作る3Dプリンターの造形方法です。3Dプリンター内部のノズルが加熱され、溶けたフィラメントが指定された位置に押し出されることで、平面状の層が作られます。この動作を何度も繰り返し、層を上に積み上げることで立体物を完成させます。
PLAやABS、PETGなど使える材料の種類が多く、コストを抑えながら造形できる点が特徴です。
②光造形方式
光造形方式は、液体状の樹脂に光を当てて固めながら形を作る3Dプリンターの方式で、高い造形精度を実現できます。タンクに入った光硬化性樹脂に対して、紫外線や可視光を照射し、断面形状ごとに樹脂を硬化させて積層していきます。
光の当て方によって3Dプリンターの方式が分かれており、以下3つの方式があります。
| 方式 | 特徴 |
|---|---|
| SLA | レーザーを細かく動かして硬化させる |
| DLP | 映像を投影して一度に面を固める |
| LCD | 液晶パネルを使って光を制御する |
いずれも積層ピッチが細かく、表面が滑らかで精密な造形が可能なため、フィギュアや歯科模型、精密部品の試作などによく使われています。
③インクジェット方式
インクジェット方式は、3Dプリンターのヘッドから液体材料を微量ずつ噴射し、紫外線で瞬時に固める造形方式です。インクジェットプリンターと似た仕組みで、必要な部分にだけ材料を配置しながら層を重ねていきます。
この3Dプリンター方式の特徴は、複数の材料を同時に使える点にあります。硬い部分と柔らかい部分を1つの造形物の中で作り分けたり、色や質感を変えたりすることが可能です。
④粉末焼結方式
粉末焼結方式(SLS方式)は、粉末状の材料にレーザーを照射して部分的に溶かし、粒子同士を結合させる3Dプリンターの造形方式です。3Dプリンターの造形エリア全体に薄く粉末を敷き、その上からレーザーで必要な部分だけを焼結させていきます。
この工程を繰り返すことで立体物を作りますが、造形されていない周囲の粉末が自然に支えとなるため、サポート材を使わずに複雑な形状を造形できるのが特徴です。
⑤粉末固着方式
粉末固着方式は、粉末材料に液体の接着剤を吹き付けて形を固定する3Dプリンター造形方式です。粉末を薄く敷き、その上から3Dプリンターのプリントヘッドが必要な部分にだけバインダーを噴射します。
3Dプリンターで造形した直後の状態では強度が低いため、乾燥や焼結といった後工程を行い、強度を高くします。砂や金属、セラミックなど幅広い材料に対応でき、複雑な内部構造を持つ造形物でもサポート材なしで製作できる点が特徴です。
3Dプリンター出力方式ごとの用途

5つの3Dプリンター方式の特徴をそれぞれ解説しましたが、それぞれの方式で用途や作成できる造形物は異なります。ここでは以下5つの用途を紹介します。
- 熱溶解積層方式
- 光造形方式
- インクジェット方式
- 粉末焼結方式
- 粉末固着方式
①熱溶解積層方式
熱溶解積層方式の3Dプリンターは、プロトタイプから最終製品部品まで幅広く製造できます。主な用途は以下の通りです。
- 機械部品の試作
- 組立治具
- 作業用の固定具
- 筐体やカバー類
内部に空洞や配線スペースを持つ部品も3Dプリンターで造形できるため、電子機器のケースやプロトタイプ製作にも適しています。
光造形方式
光造形方式(SLA)の3Dプリンターは、高い精度と滑らかな表面品質が求められる用途に強い方式です。細かいディテールまで再現できるため、「見た目」や「寸法精度」が重要な造形に向いています。
主な造形物としては以下が挙げられます。
- 歯科模型
- 医療用モデル
- 精密部品の試作
- フィギュアや装飾品
- 宝飾品の原型
美しい仕上がりが得られるため、デザイン確認用のモデルや、完成品に近い外観が必要な試作品にも適しています。医療・デザイン・精密分野で使われることが多く、「精度重視」の用途に選ばれる方式です。
インクジェット方式
インクジェット方式の3Dプリンターは、色・硬さ・質感を同時に表現できることが特徴で、完成品の見た目を確認する用途に向いています。
この3Dプリンターの方式では、製品デザイン確認用のモックアップ、フルカラーの試作品、複数素材を組み合わせた部品などが造形できます。硬い本体部分と柔らかいゴムのような部分を一体で作ったり、色分けされた操作パネルを再現したりすることが可能です。
粉末焼結方式
粉末焼結方式(SLS)の3Dプリンターは、強度・耐久性が必要な機能部品を作るのに適した3Dプリンターの方式です。サポート材を使わずに造形できるため、複雑な形状や内部構造を持つ部品でも安定して製造できます。
主な用途は以下の通りです。
- 機械部品
- ダクトやケース
- センサーカバー
- 医療機器部品
- 航空・産業用途の試作部品
射出成形に近い物性を持つ部品を作れるため、試作だけでなく少量生産にも使われています。見た目よりも「使えるかどうか」「壊れないか」を重視する用途で選ばれる3Dプリンター方式です。
粉末固着方式
粉末固着方式の3Dプリンターは、造形スピードと材料の自由度を活かした用途に強い方式です。粉末を接着剤で固めるため、形状の自由度が高く、大型モデルや複雑構造の造形にも向いています。
代表的な用途としては、以下の通りです。
- 建築模型
- 医療用の骨格モデル
- 鋳造用の砂型や中子
- セラミック部品の試作
金属粉末やセラミック粉末を使えば、後工程を前提とした部品製造にも対応可能で、試作から工程検証まで幅広く活用されています。特に「早く形にしたい」「複雑な構造を作りたい」場面でおすすめです。
3Dプリンターの造形精度を高める方法

3Dプリンターで造形をする際に精度を高めるには、作りたい造形品にあった3Dプリンター方式を選ぶだけでは不十分です。ここでは3つの方法について紹介します。
- スライサー設定を最適化する
- 適切な材料を使用する
- 3Dモデルの設計を見直して精度が出やすくする
①スライサー設定を最適化する
3Dプリンターの造形精度を高めるうえで、効果が出やすいのが3Dプリンターのスライサー設定の見直しです。スライサーとは、3Dモデルのデータを「どの順番で・どの条件で印刷するか」を指示するソフトであり、設定次第で仕上がりは変わります。
たとえば、3Dプリンターのレイヤーを細かく設定すると、積層痕が目立ちにくくなり、表面の滑らかさが向上します。また、印刷速度を下げることでノズルの振動や材料のズレを抑えられ、寸法誤差の発生を防ぎやすくなるのです。
②適切な材料を使用する
3Dプリンターの造形精度を安定させるためには、3Dプリンターの設定だけでなく、使用する材料の選択も重要です。3Dプリンター用の材料にはさまざまな種類があり、それぞれ収縮率や反りやすさ、硬さなどの特性が異なります。
たとえばPLAは造形時の変形が少なく、寸法が安定しやすいため、精度を重視した造形や初心者の方に向いています。用途に合った材料を選び、湿気対策や適切な保管を行うことで、狙った寸法に近い精度の高い造形が可能になります。
以下の記事では、3Dプリンターで使用する材質、素材の特徴を解説していますので、あわせてご覧ください。
③3Dモデルの設計を見直して精度が出やすくする
3Dプリンターの精度は、印刷設定や材料だけでなく、3Dモデルの設計段階でも左右されます。3Dプリンターには積層方向やノズル径などの物理的な制限があるため、設計通りの寸法がそのまま再現されるとは限りません。
そのため、はめ込み部分や穴径にはあらかじめ0.2〜0.4mm程度の余裕を持たせることが重要です。また、薄すぎる肉厚や急なオーバーハング形状は精度低下の原因になるため、造形しやすい形状に修正する必要があります。
3Dモデルの精度を高めたいという方は、3Dプリンターの設定だけでなくCADを扱うスキルを向上する必要があります。そこでおすすめなのが「Autodesk Fusionセミナー講習」です。Autodesk Fusionセミナー講習は、短期間で実務レベルを身につけることが可能です。以下のリンクから詳細を確認できますので、チェックしてみてください。
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方式ごとのおすすめ3Dプリンター5選

最後は各方式でおすすめの3Dプリンターを紹介します。
| 商品名 | 方式 | 価格 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Raise3D Pro3 Plus | 熱溶解積層方式 | 1,188,000円(税込) | 大型造形とデュアルヘッドによる安定した連続生産が可能 |
| Form 3L | 光造形方式 | 2,030,600円(税込) | 大型サイズでも高精度・高品質な造形を実現できるプロ向け |
| Keyence AGILISTA-3200 | インクジェット方式 | 要問い合わせ | かん合確認まで行える高精度・高靭性な試作品を造形可能 |
| Stratasys H350 v1.5 | 粉末焼結方式 | 要問い合わせ | 射出成形に近い強度を持つ機能部品を安定して造形できる |
| ExOne X1 25PRO | 粉末焼結方式 | 要問い合わせ | 金属部品を高速かつ大量に生産できる |
Raise3D Pro3 Plus(デュアルヘッド)
Raise3D Pro3 Plusは、デュアルヘッドによる複数材料造形と大型造形サイズを両立した産業向け3Dプリンターで、強化されたZ軸構造による高い剛性と24時間連続稼働に耐える安定性を備えています。
試作品の作成から治具・実用品レベルの部品製造まで対応できるうえ、自動ベッドレベリングやカートリッジ式ホットエンドにより日常運用やメンテナンスの負担を抑えられます。
Form 3L
Form 3Lは、大型造形と高精度を同時に求められる現場向けに設計された光造形3Dプリンターです。独自のLFS方式と2基のレーザーユニットにより、広いビルドエリア全体で均一な微細精度を保ちながら高速造形を可能にしています。
低い剥離力によってサポート除去や後処理の手間を軽減できるため、医療モデルや建築模型、精密試作品など、高品質と作業効率の両立が求められる用途において安定した運用が行える点が強みです。
Keyence AGILISTA-3200
キーエンスのAGILISTAシリーズは、細かい積層と高い寸法精度を活かした業務用3Dプリンターです。部品同士のかん合確認やネジ締結といった、実機に近い検証が可能な試作品を造形でき、水溶性サポート材による後処理の簡便さも大きな特徴です。
硬さと粘りを兼ね備えた独自材料によって、設計段階の外観確認から機能検証までを1台でカバーできます。
Stratasys H350 v1.5
Stratasys H350 v1.5は、ナイロン粉末をレーザーで焼結するSLS方式を採用した高性能3Dプリンターです。サポート材を必要としない3Dプリンターの造形プロセスにより、複雑な内部構造や薄肉形状を安定して製造できます。
射出成形品に近い強度と耐久性を持つ部品を少量から効率よく生産できるため、自動車や航空宇宙、産業機器分野における機能部品の試作から小ロット量産まで幅広く活用されています。
ExOne X1 25PRO
ExOne X1 25PROは、バインダージェッティング方式による金属3Dプリンターとして、業界最大級の造形サイズと高い生産性を備えたシステムです。サポート不要の造形と高速プリントによって、複雑形状の金属部品を大量かつ効率的に製造できます。
造形後の焼結工程を経ることで最終製品として使用可能な強度を確保でき、自動車・航空宇宙・医療分野における試作から本格量産までを視野に入れた金属部品製造に適しています。
3Dプリンターの方式についてのまとめ
3Dプリンターは複数の造形方式が存在し、それぞれ精度・強度・コスト・用途が異なるため、作りたい造形物や求める仕上がりに応じて3Dプリンター方式を正しく選ぶことが重要です。
また、3Dプリンターの方式が合っているのに造形が思うようにいかない場合は、スライサー設定や材料選定、3Dモデル設計を見直すことで精度を高めることも可能なため、本記事を参考に自社や個人の目的に最適な3Dプリンターと造形方式を検討してみてください。





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