近年、3Dプリンターを教育の一環として導入する学校が増えてきています。3Dデータを元に立体的なモノを作り上げる3Dプリンターは実際にビジネスの現場においても活躍の幅が広がっていることは確かです。
海外だけでなく日本でも導入を進める学校が増えていますが、実際にどのような用途がありメリットがあるのでしょうか。決して安価なモノではないため、導入を考えている学校も用途や特徴を理解しておく必要があります。
そこで本記事では3Dプリンターを学校で導入するメリットをはじめ、概要・導入事例など解説します。ぜひ本記事を参考に学校への導入をスムーズに進めてください。
3Dプリンターでできることとは?
3Dプリンターは何が作れるのか、どんなふうに活用されるのかをまずは理解しておきましょう。
3Dプリンターは、デジタルデータから立体的(3D)のオブジェを造る技術です。近年では金属3Dプリンターも主流となっていますが元々は樹脂プリンターが一般的でした。
3Dデータを元にして製造されるため、アイデア次第ではどのようなモノも造ることが可能で、キーホルダーや医療機器、車、近年では家を3Dプリンターで建築できるまで技術が発展しています。
今後も技術の進歩により3Dプリンターで作成できるものは無限大であり、日常生活になくてはならないものとなると予想されます。また、活躍の幅を広げていくことから3Dプリンターを使用できるスキルや経験は大きな武器になるでしょう。
3Dプリンターの使用方法については以下の記事を参照ください。
3Dプリンターの学校への導入状況
実際に日本ではどのくらい3Dプリンターの導入が進んでいるのでしょうか。実際に日本の学校では3Dプリンターの導入は年々増加傾向にあり、千葉県船橋市では全市立中学校27校で樹脂3Dプリンターが導入されています。
また、SK本舗が実施した「教育現場の3Dプリンター導入についての調査報告」では、日本国内の小学校、中学校、高等学校、高等専門学校を対象に以前から3Dプリンターの導入を検討していると回答したのは65%と回答しています。
しかし、3Dプリンターの導入が急速に進まない理由として、
- 技術を持った指導者がいない
- 学校設備のPCスペックが低い
- 生徒人数分の予算が足りない
などが導入の障壁となっています。
今後、3Dプリンターの導入を検討している学校はこれらの課題を解決していくことが求められるでしょう。
3Dプリンターを学校に導入するメリット
実際に3Dプリンターを学校に導入することでどのようなメリットがあるのか?下記3つの理由が挙げられます。
- 想像力が豊かになる
- 将来の進路の幅が広がる
- 学習意欲の向上
想像力が豊かになる
3Dプリンターを使用するということは、頭で想像したモノを形にするということです。実際に頭では想像できていても形にするということは簡単ではありません。
そこで3Dプリンターを使い、実際に作り出すことで想像力を豊かにする効果があります。もし仮にうまく作り出せなかったとしても挑戦を繰り返すことで自分の頭で思い描いたモノへと近づきます。
その中でどのように工夫すれば自身の思い描いたモノへと近づくのかを考える創造力も身につけることができるでしょう。
将来の進路の幅が広がる
3Dプリンターは企業でも導入が広がっており、現在では、自動車業、製造業、建築業などが代表的ですが、今後様々な業種で使用できる技術が求められるでしょう。
子供の時から実際に3Dプリンターを扱うスキルを身につけておけば、将来の進路の幅は大きく広がります。もちろん、業種によっては資格や一定のスキルが必要とされますが、3Dプリンターを扱えることで将来進路が狭まるということはないでしょう。
学習意欲の向上
歴史上の建築物や生態系など教科書に掲載されている写真だけを見ても、どのように作られたのかなど理解するのは簡単ではありません。実際に手を動かしながら3Dプリンターで再現すれば、理解が深まるだけでなく学習意欲を向上させることも可能です。
3Dプリンターであらゆるモノを再現できることがわかれば、自身の大好きな建造物やアニメ、ゲームなど「どのように作られているのか」と疑問や興味を持って創作意欲を向上させます。
結果、知識の習得や創造性の向上も期待できるでしょう。
日本の学校における3Dプリンター導入事例
日本ですでに3Dプリンターを導入している企業はどのような活用をしているのでしょうか。下記2つの学校から事例を紹介します。
- 武蔵越生高等学校
- 帝京大学
武蔵越生高等学校
埼玉県入間郡にある武蔵越生高等学校は生徒からの要望により3Dプリンターを導入しています。武蔵越生高等学校では3Dプリンターを導入する前は、車や飛行機などをモデリングして紙に印刷していました。
しかし、紙にモデリングを行ってもちょっとした設計ミスや失敗に気づくことはできません。
そこで3Dプリンターを導入することで、生徒は創作意欲が向上し制作に対するクオリティのこだわりが強くなりました。特に「ゴム鉄砲」を作る情熱は強く、全体の形やゴムを引っ張って弾く構造など3Dプリンターで何度も作成し「形にできるからこそやろう」という気持ちが芽生え、学習意欲の向上にもつながりました。
引用:XYZPRINTING
帝京大学
帝京大学理工学部機械・精密システム工学科では、初心者でも乗りやすく操作しやすいレーシングカーを3Dプリンターを用いて開発しています。
3Dプリンターでは主にレーシングカーのパーツとなる「ステアリング」「インジェクターマウント」を作成しています。導入前は現物よりも小さい1/2サイズのモノしか作成できませんでした。
しかし、実際に3Dプリンターで代替することで設計通りの形状に仕上がりました。また、3Dプリンターは積層の途中経過が見れるのも嬉しいポイントでした。
パーツの改良により帝京大学は学生フォーミュラ大会の総合18位への入賞を達成しています。
引用:FLASHFORGE
海外の学校では3Dプリンターの導入が進んでいる?
海外の学校では日本より早く3Dプリンターの導入が進んでいます。ここでは下記2カ国の取り組みについて紹介します。
- イギリス
- オーストラリア
イギリス
イギリスは教育機関への3Dプリンター導入に最も積極的な国であり、2016年時点で全中学校・高校4000校で3Dプリンターの導入を進めていました。
なぜここまで積極的に導入を目指しているのか?それは3Dプリンターが持つ2つの教育メリットによるものです。
1つ目は子供たちの想像力や起業家精神を喚起するのに非常に有効であることです。3Dプリンターを使用できれば、新たな企業が誕生する基盤を築くことが可能になり、起業家の卵である学生を育成できるからです。
2つ目は3Dプリントの技術の汎用性の高さによるものです。
3Dプリンターはあらゆる業界で使用されており、3Dプリント技術を身につければ努力次第でどの分野での仕事にも就ける可能性があるからです。
3Dプリンターによってキャリアにあらゆる将来の可能性を与えることができることからイギリスでは積極的に導入が進んでいます。
オーストラリア
オーストラリアもイギリス同様に3Dプリンターの導入が積極的に行われており、教育改革が進んでいます。
また、単に導入し教育に活かす・使い方を学ぶのではなく教育カリキュラムの見直しが目的であり、科学・数学・工学・技術・芸術など様々な分野を通して学んでいます。
オーストラリアでは、3Dプリントの導入によってデジタルによる自由なものづくりの発想法を身につけさせることが狙いです。
3Dプリンターはあくまでも道具であるが、3DCADと同様に教育カリキュラムに入れることで製造業のプロセスや制約など実地に近い教育を行っています。
学校に導入するべきおすすめ3Dプリンター
最後に学校に導入するべきおすすめ3Dプリンターを2つ紹介します。導入を検討している方はおすすめの3Dプリンター導入を検討してみてはいかがでしょうか。
- FLASHFORGE Creator Pro2
- TiertimeUP Plus2 3Dプリンターセット
FLASHFORGE Creator Pro2
「Creator Pro2」は同時に複数のモデルをプリントできる独立式デュアルヘッドを搭載しており、モデル本体への垂れたフィラメントが混ざることを防止するフィラメントクリーニングプレートの特徴を持っています。
幅広いフィラメントに対応しているため様々なモノづくりが可能であり、価格も96,800円と導入しやすい価格で提供されているため予算にも優しい学校の導入に最適な3Dプリンターです。
- 造形方式:FFF(熱溶解積層法)
- 造形サイズ:200 x148 x150 mm
- 積層ピッチ:0.05mm~0.4mm
- 使用部材:ABS、PLA、HIPSなどの溶性サポート樹脂
- 価格:96,800円(税込)
TiertimeUP Plus2 3Dプリンターセット
引用:Fabmart
「UP Plus2 」はシンプルかつ軽量でありながら、アメリカMake誌に掲載する3Dプリンターバイヤーズガイドにおいて「消費者による使いやすさ第一位」を獲得したプリンターです。
同クラスの3Dプリンターの中ではトップクラスの性能を誇り、使いやすさと安定感を実現し学生や初心者にもおすすめの3Dプリンターです。
- 造形方式:FDM(熱溶解積層法)
- 造形サイズ:140 x 140 x 130mm
- 積層ピッチ:0.15 /0.20 /0.25 /0.30 /0.35 /0.40mm
- 使用部材:ABS樹脂、PLA樹脂
- 価格:189,200円(税込)
3Dプリンターは学校に用途に合わせて選ぶ必要があります。「3Dプリンターの選ぶポイントは?」と疑問に思う方は以下記事を参照ください。
日本の学校では3Dプリンターの導入が進む
あらゆる業界で活躍の幅が広がる3Dプリンターは近い将来、さらに身近なモノとして使用されるでしょう。日本の学校において導入が進んではいるものの、様々な理由により導入できない学校があるのも事実です。
子供の将来を考えるうえで3Dプリンターはあらゆる選択肢を与えてくれる存在となり、アイデアを持つ想像力豊かな人材の創出へとつながります。
本記事を参考に3Dプリンターの導入を検討してみてはいかがでしょうか。