日本には、世界各国のユーザーから高く評価されている工作機械メーカーが数多くあります。近年は、AIやIoTを活用した次世代型工作機械の開発に力を入れるメーカーも増えてきました。
本記事では、工作機械の進化とメーカーの役割、日本の主要な工作機械メーカーについて解説します。
工作機械の進化
ここでは、工作機械の進化について探るために、工作機械の歴史、現代の工作機械の特徴、将来の工作機械の展望にスポットを当てて解説します。
工作機械の歴史
工作機械の歴史は非常に古く、実に古代エジプトまで遡ります。太古の時代からものづくりの基盤を支えてきた工作機械。そのスタートは工作物を回転させながら切削する「旋盤」でした。
ちなみに、17世紀に開発された木工旋盤が現存するコレクションの中で最も古いとされています。
工作機械が発展を遂げたのは、18世紀末~19世紀初頭にかけて起きた産業革命期です。蒸気機関や紡績機械など近代的な工作機械がイギリスで発明され、その後、欧米各国で様々な工作機械が開発されました。
20世紀に入ると自動加工やNC工作機械が登場。製品の大量生産が可能になると同時に、機械性能も飛躍的に向上します。
現在は、スマートファクトリー(IoTやAI技術を活用した製造システム)の実現が進められ、日本の工作機械メーカーも開発に着手しはじめました。
工作機械産業は、3Dプリンティング技術の進歩や自動車の自動運転、5G通信の普及など産業分野の変化に対応し、同時にニーズも多様化してきました。
現代の工作機械の特徴
現代の工作機械は、高度な技術革新により、高精度な加工が実現されるようになりました。具体例としては、NC技術の進歩による高精度な位置決め、熱変位補正機能による加工精度向上、自動工具交換による作業効率化などが挙げられます。
また、多様な加工ニーズに対応するため、3Dプリンターなどの新技術も登場しました。3Dプリンターは、個人・法人問わず高い注目を集めている注目の製品です。
さらに、AIやIoTを工作機械に導入することで、加工データの分析や故障予測など作業の効率化も実現。同時に、安全性の強化、省エネルギー化、低騒音化など環境への配慮も進んでいます。
革新的な製品開発や作業効率化に貢献している工作機械は、まさに現代の製造業の要であるといえるでしょう。
将来の工作機械の展望
日本工作機械工業会の稲葉善治会長(ファナック会長)は、2024年の工作機械の年間受注額が前年度より微増(1兆5000億円)するとの見通しを示しました。
2024年度以降は、2023年度後半の半導体や電気自動車(EV)の需要拡大が、工作機械需要を下支えするとみられています。参照:日経クロステック
現在、デジタル化の推進、IoTやAIを活用した技術発展、5G通信関連投資増加を背景に、製造機械のニーズは拡大の一途をたどっています。
国内外で需要が高まりつつある工作機械業界は、世界を視野に入れた経営戦略が重要なカギを握っているといえるでしょう。
今後は新興国への市場開拓、多様なニーズに対応できる製品の開発がさらに重要性を増していくと予想されています。
より詳しく知りたい方は、下記の記事もぜひ参考にしてください。
日本の主要な工作機械メーカー
ここからは、日本の主要な工作機械メーカーを紹介していきましょう。
ファナックやマキタ、DMG森精機など世界トップクラスの技術力を持つ各メーカーの特徴や強み、主要な製品などを詳しく解説します。
ファナック
ファナックは、世界トップクラスの工作機械メーカーで、CNC装置やロボットなどの産業用自動化機器で高いシェアを誇ります。
豊富な経験による高い技術力、幅広いニーズに対応できる多彩な製品、技術革新への積極的な投資が特徴のメーカーです。
強みとしては、高品質なCNC装置、長期にわたって使用できる耐久性能、充実のアフターサービスなどが挙げられます。
主要製品は、工作機械を制御するCNC装置、穴あけ加工に特化したロボドリル、高精度な位置決め・速度制御を実現するサーボモータなどです。
マキタ
マキタは、充電式工具を主体とした日本の電動工具メーカーです。創業は1915年で、当初はモーター販売・修理会社としてスタートしました。
強みは、豊富な充電式工具の種類、電動工具メーターとしてのブランド力の高さ、耐久性が高いバッテリー技術など。全国にサービス拠点があるため、修理やメンテナンスをスピーディに対応できるのも特徴です。
主要製品には、インパクトドライバーやディスクグラインダーなどの電動工具、エンジン工具、掃除機などがあります。充電式マルノコなどコードレス商品も数多く販売しています。
DMG森精機
DMG森精機は、世界トップクラスの技術力と生産力を誇る機械製造会社です。2016年、ドイツと日本の工作機械メーカーの合弁会社として経営をスタートしました(旧社名:株式会社森精機製作所)。
特徴としては、高精度・高剛性な工作機械、旋盤、マシニングセンタ、複合加工機など取扱機器の幅広さが挙げられます。強みは、高度な技術開発力、世界規模の生産体制です。
主要製品は、旋盤、マシニングセンタ、複合加工機など。また、デジタル技術を活用したスマートファクトリーソリューションも提供しています。
安川電機
安川電機は、モーションコントロール(モーターの位置制御)、ロボット、システムエンジニアリングの3つの事業を展開しています。近年は、AIやIoTを活用した新製品開発にも尽力しています。
特徴・強みは、世界トップシェアを誇るモーションコントロール製品、産業用ロボットの精度と性能の高さです。主要製品には、ACサーボ、インバータ、産業用ロボットなどが挙げられます。
アマダ
アマダは、板金加工機械で世界トップクラスの日本の工作機械メーカーです。
主にレーザー加工、パンチング、ベンディングなど、板金加工に関する加工機械を手掛け、単なる機械販売だけでなく顧客のニーズに合わせた問題解決も提案しています。
特徴・強みは、高精度で高効率なレーザー加工機、生産効率をアップする板金加工の自動化システムです。
主要製品は、レーザーマシン、パンチングマシン、ベンディングマシン、ファイバーレーザマシンなど。工作機械以外にも、ソフトウェアや周辺機器なども販売しています。
他にも、下記の記事で主要な工作機械メーカーを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
工作機械メーカーが果たす役割
それでは最後に、工作機械メーカーが果たす役割について解説します。
品質向上と品質保持
工作機械メーカーは、製品の品質向上と品質保持には欠かせない存在です。
例えば、高精度な工作機械を用いることで、加工部品の精度がアップし、同時に製品の動作精度や耐久性、安全性も向上します。
近年は、新しい加工技術の開発や自動化技術の進化により、従来では不可能であった複雑な形状の部品加工も実現できるようになりました。
このように、工作機械メーカーは、最新技術を積極的に採用しながら製品の品質向上と品質保持に貢献しているのです。
技術革新と開発
工作機械メーカーは、製造業の技術革新と開発において重要な役割を果たしています。
近年は、AIやIoTなどの最新技術を生かした高精度、高効率、高機能な工作機械を開発するメーカーが増えてきました。
多くのメーカーは、環境負荷低減や安全性の向上など、持続可能な社会実現に向けた取り組みも積極的に行っています。
このように、常に時代に即して製造業全体の生産性向上に寄与し続けてきたのです。
今後も工作機械メーカーは、技術革新と開発を通じて、製造業の未来を創造する重要な役割を担い続けていくでしょう。
産業界への貢献
工作機械メーカーは高精度で高性能な工作機械を提供し、製造業の生産性アップを目指すなど、現代の産業界における貢献度は非常に高いです。
近年は、AIやIoTなどの先進技術を活用した「スマート工作機械」の開発に取り組むメーカーも数多く見られるようになりました。
技術革新を通じて製造業全体の技術進歩を促進するなど、人材不足が懸念される製造現場の効率化にも貢献しています。
今後も工作機械メーカーは、ものづくりの未来を担うリーダー的存在として新たな価値を創造し続けることでしょう。
工作機械のメーカーまとめ
この記事では、工作機械の歴史を紐解きながら、進化の過程を探ってみました。
日本に数多くある工作機械の有名メーカーは、産業界に革新をもたらしました。今後もこれら有名メーカーの数々は、工作機械の技術革新、および現代の製造業においても重要な役割を果たしていくことでしょう。