3Dプリンターで作品を作る際に審美性を重視する方は多いかと思いますが、もう一つ忘れてはいけないのが強度です。いくら美しい作品を作れてもすぐに壊れたり変形してしまったりしては意味がありませんし、機械部品などを作る場合は事故の元になります。
今回の記事では強度に優れた作品を作るための方法や、おすすめのプリンターについて解説いたしますので、3Dプリンター導入を考えている方は是非参考にしてください。
3Dプリンターの作品の強度とは
3Dプリンターで生成される作品の強度は、プリンターの種類(出力方式)や使用する材料などに左右されます。なんらかの造形物を作成する以上は少しでも強度を高めたいものですが、そもそも強度とはなんなのでしょうか。
3つの力と強度
強度とは簡単いえば、どのくらいの力に耐えられるかを数値化したものです。強度が高いほど壊れにくいと考えてください。物体に掛かる力は大きく引張力、圧縮力、せん断力に分けられます。
引張力
引張力とは、簡単に言えば物体の外側に向かう、伸ばす力のことです。引張力強度が高いほど、引張力に対して変形しづらく、壊れにくくなります。
3Dプリンターは基本的に積層を繰り返す仕組みになっているため、上下方向の引張力に弱いとされています。
圧縮力
圧縮力は引張力とは逆で、物体の内側に向かう、縮める力のことです。圧縮力強度が高いほど、圧縮力に対して変形しづらく、壊れにくくなります。
せん断力
せん断力とは、物体が切断される方向に働く力のことです。包丁で物を切るときには、せん断力が働いています。
上記の3つの力全てに強いのが理想といえますが、実際にはあちらを立てればこちらが立たず、となることも多いです。
せっかく優れた造形方法や材料を採用しても、形状のせいで特定の力に対して弱くなってしまうということもありえます。高い強度を実現したい場合は、丁寧な設計やテスト造形を行なうことが大切です。
3Dプリンターで作品を作るための方法について知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
3Dプリンターで作品の強度を高めるには
3Dプリンターで作品の強度は、造形方法と材料に大きく左右されます。現在主流の造形方法には
- 材料押出法(MEX)
- 光造形
- インクジェット方式
- マテリアルジェッティング
- 粉末焼結積層造形(SLS)/(SLM)
- マルチジェットフージョン方式
などがあります。
上記の中でも強度が高いのは材料押出法、粉末焼結積層造形(SLS)/(SLM)、マルチジェットフージョン方式の3つです。それぞれの特徴を解説します。
材料押出法は安価で強度も高め、ただし精度や見た目に難アリ
材料押出法は、紐状のプラスチックを熱して溶かし、冷え固まった素材を重ねて造形する方式です。仕組みがシンプルなため比較的安価での導入が可能で、形状の自由度も高く、強度も高くしやすいです。一方で精度に難があり(以前と比べて改善はされてきています)、積層のあとがはっきり残るため、デザインを重視するものには向きません。
粉末焼結積層造形(SLS)/(SLM)は高強度で無駄が少ない
粉末焼結積層造形(SLS)/(SLM)は、レーザー光で粉末を焼き固める方式です。高い精度と強度を兼ね備えた優秀な造形方式であり、素材のムダも生まれにくく経済的です。金属素材も使用できます。一方で、見た目がザラザラしてしまうという欠点もあるため、目に見えない製品内部などに使うのが一般的です。
マルチジェットフージョン方式は高い強度と造形スピードを兼ね備える
マルチジェットフージョン方式は、パソコン販売で知られるHP独自の技術です。インクジェット方式と粉末焼結積層造形を組み合わせたような方式で、高い強度と早い造形スピードを兼ね備えています。
3Dプリンターの強度が高い材料
3Dプリンターは造形方式によって利用できる材料が異なります。例えばマルチジェットフージョンの場合、ナイロンを使うのが主流です。ここでは3Dプリンターで使える、強度の高い材料を紹介します。
カーボンPLA
カーボンPLAは、カーボンとPLA(樹脂)を混合させた材料です。PLAよりも軽量で、なおかつ強度や耐久性に優れています。軽量でありながら強度が求められるドローンのパーツなどに使用されます。
チタン
金属の一種です。金属でありながら軽くて丈夫、しかも強度や耐食性に優れるというメリットがあります。航空機や自動車、ゴルフクラブなどの材料として広く使用されています。
金属であるため、積層跡が目立つ点には注意が必要です。他にも、アルミニウムやステンレスなどが使用されることがあります。
CFPR(炭素繊維強化プラスチック)
プラスチックを炭素繊維で強化した、比較的新しい素材です。金属に変わる軽くて強度の強い素材であり、航空宇宙部門などで使用されています。一般的なプリンターでは利用が難しいのが難点です。
3Dプリンターについてさらに知りたいという方は、こちらの記事も参考にしてください。
強度の高い作品が作れるおすすめ3Dプリンター
「強度の高い作品が作れる」と銘打っているプリンターは多数ありますが、その中でも特に総合力に優れるのが業務用プリンターの「Raise3D」シリーズです。安価でありながら高性能で、800社以上の導入実績があります。
トップクラスの造形精度
Raise3Dの大きな特徴として、非常に優れた造形精度があげられます。ハイエンドプリンターに匹敵する0.1mmの寸法精度のため、例えばネジをはめ込むような複雑な造形も可能です。
大型造形に対応、200時間の稼働も可
Raise3Dは頑丈な機械構造を持ち、最大で305×305×605mmの造形ができます。200時間以上稼働させることも可能です。造形時間が長くても失敗しづらいため、製造にかかるコストや無駄な時間を抑えられます。
タッチパネルで簡単操作
Raise3Dの操作はタッチパネルで行います。造形の進行状況が逐一表示されるため、どこまで造形が進んでいるか、あとどれくらいの時間がかかるのかをひと目で確認可能です。
強化繊維複合フィラメントで高強度を実現
Raise3Dは様々なフィラメント(素材)に対応しています。PLAやABSなどのスタンダードな素材も揃っていますが、特に注目なのが強化繊維複合フィラメントです。主な特徴をまとめました。
- BASF Ultrafuse PP GF30フィラメント
グラスファイバーを30%配合。耐熱性、強靭性、耐薬品性などに優れる。 - BASF Ultrafuse PAHT CF15フィラメント
カーボンファイバーを15%配合。最高クラスの耐温性を持ち、剛性や研磨性に優れる。 - BASF Ultrafuse PET CF15フィラメント
カーボンファイバーを15%配合。耐熱性、寸法安定性、強度などに優れる。
高性能でありながら割安な料金
Raise3Dにはいくつかのシリーズがありますが、最もスタンダードなRaise3D Pro3の定価は902,000円です。数百万~数千万円することも珍しくない業務用3Dプリンターの世界においては、かなり低価格と言えます。もちろん、性能も十分です。Raise3Dのお見積り・資料請求はこちらからどうぞ。
3Dプリンターの強度についてまとめ
3Dプリンターで制作した造形物の強度は、出力方式や材料(フィラメント)などに左右されます。強度に優れた物を作りたいという場合は、それを実現するプリンターや材料を選ぶべきです。
Raise3Dは安価でありながら強度に優れた強化繊維複合フィラメントを選ぶことができるため、強度を重視したい方には特におすすめです。