3Dプリンター技術は、近年急速な進化を遂げています。
3Dプリンターといえば、もともと試作品や部品製作が主な用途でしたが、現在では医療分野での人工臓器の作製や、教育現場での教材制作、さらにはアパレルやジュエリーデザイン、スイーツまで、その活用範囲は驚くほど広がりはじめました。
それでは、3Dプリンターが私たちの生活をどのように豊かにしているのか、最新活用事例を参照しながら具体的に解説していきましょう。
3Dプリンターとは

3Dプリンターは、デジタルデータを基に立体モデルを製造する機器です。
材料(フィラメント)を一層ずつ堆積しながら立体構造物を作り出すため、積層造形装置とも呼ばれています。
3Dプリンターは1980年代に開発され、当初は高価で専門的な技術が必要でした。
しかし、2010年以降、3Dプリンター市場拡大とともにリーズナブルな製品も数多くリリースされ、業務用途以外にも趣味のDIYなど、幅広いユーザーから活用されるようになりました。
3Dプリンターの種類
3Dプリンターには主に5つの方式があり、それぞれに独自の特徴があります。
3Dプリンターは、加熱したフィラメントを層状に積み上げる熱溶解積層方式(FDM/FFF)が最も一般的です。
その他、液状樹脂を紫外線で硬化させる光造形方式(SLA)、紫外線硬化樹脂を吹き付けて積層するインクジェット方式などがあります。
以下は、3Dプリンターの種類とその特徴を分かりやすく表にまとめたものです。
| 方式 | 主な特徴 | メリット | デメリット |
| 熱溶解積層方式 | フィラメントを溶かして積層 |
|
|
| 光造形方式 | 液体樹脂を紫外線で硬化 |
|
|
| インクジェット方式 | 樹脂を噴射して紫外線で硬化 |
|
|
| 粉末焼結方式 | 粉末をレーザーで焼結 |
|
|
| 粉末固着方式 | 粉末に接着剤を噴射 |
|
|
医療業界での3Dプリンターの活用事例

3Dプリンター技術は、医療の質を飛躍的に向上させています。
以下では、特に注目度の高い活用事例を2つ紹介します。
活用事例①オーダーメイド義肢|Instalimb
3Dプリンター技術は、義肢の製作でも活用されています。
もともと義肢製作といえば、既製品をベースに調整を施すものが主流でしたが、3Dプリンターの登場により一人ひとりの体型に合わせたオーダーメイド義肢が実現しました。
スタートアップ企業「Instalimb」は3Dプリンターを活用し、従来の約1/10の価格で提供できる義肢を製作しました。
昨今では、3Dスキャナーで装着部位をスキャンして形状データを取得し、さらにAIで患者の自然な動作を分析した義肢の研究も進んでいます。
活用事例②手術シミュレーション用臓器|丸紅情報システムズ
3Dプリンターは、手術シミュレーション用臓器モデルの製作にも活用されています。
この技術により、医師は手術前に患者個々の臓器構造を立体的に把握できるため、手術の安全性・成功率向上、患者への理解促進などのメリットをもたらしました。
丸紅情報システムズの「デジタルモールド®MED」は、CTやMRI画像データから肝臓の3Dモデルを作成しました。質感やリアリティを重視して、素材には植物由来のゲル素材を使用。血管部分は再利用できる環境負荷も考慮したモデルです。
以下の記事は、3Dプリンターの医療機器活用例を詳しく解説しています。
佐賀大学医学部や京都大学で研究が進められているバイオ3Dプリンターについても解説しているので、医療における3Dプリンターの最新事情を知りたい方もぜひご一読ください。
教育・研究分野での3Dプリンター活用事例

教育・研究分野における3Dプリンターは、従来の教育方法や研究手法に革新をもたらしています。
以下は、東京大学と千葉大学での活用事例です
活用事例①分子を可視化|東京大学物性研究所
3Dプリンター技術の進歩は、微細な分子の世界の可視化にも貢献しています。
昨今、東京大学物性研究所はクロスアビリティとの共同開発により、3Dプリンターで透明樹脂の中に電子雲を立体的に表現しました。
リアルなモデルを参照することで、学生たちは分子構造をより直感的に理解できるようになり、化学や物理の学習深化に貢献しています。この技術は、分子構造だけでなく、銀河や気象現象の可視化にも応用できるのも特徴的です。
活用事例②エンジンを軽量化|千葉大学工学部機械工学科
3Dプリンターは、工学教育の現場において、車両エンジン制作にも活用されています。
2012年の全日本学生フォーミュラ大会では、千葉大学工学部機械工学科の学生が3Dプリンターを活用しました。
軽量性を保ちながら耐久性を高めるため、エンジンのサージタンクを3Dプリンターで製作。重量を増やさないために、応力分散と流体性能向上を行った画期的な活用事例です。
製造業での3Dプリンター活用事例

製造現場でも、3Dプリンターは業務効率化コスト削減に貢献しています。
以下では、治工具や部品製作での活用事例を紹介しましょう。
活用事例①治工具内製を実現|キヤノン
キヤノン株式会社では、超精密製品の製造に必要な治工具や修理部品を内製化することで、生産効率と品質の向上を実現しています。
以前は、部品加工や組み立てを人的経験に依存していたため、製造の自動化が難しく、対応する従業員の心理的・肉体的な負担が大きな課題となっていました。
しかし、3Dプリンターの導入により、必要な治工具を社内で迅速に製作することが可能となり、外注にかかるコストと納期を削減。結果として、製品の精度を維持しつつ、作業効率改善にも大きく貢献しています。
活用事例②クラシックカー部品を復元|RPG Industries社
RPG Industries社は、Metal Xの3Dプリンターを活用してクラシックカーの部品復元に成功しました。従来の製法では1930年代のキャブレター(ガソリンと空気を混合する装置)の部品を復元できませんでした。
同社は、まずOnyx樹脂を用いた試作を行い、その後、高品質な17-4 PHステンレス鋼を使ってキャブレーター部品を作成しました。結果、キャブレーター機能や素材の特性を高い精度で再現することに成功したのです。
建築業界での3Dプリンターの活用事例

続いて、建築模型や3Dプリンター住宅など多岐にわたって活用されている、建築分野での3Dプリンターの活用事例を紹介しましょう。
活用事例①建築模型|プラスデザイン株式会社
建築模型の製作では、CADデータを使用することで迅速かつ正確な造形が可能となり、設計の視覚化やクライアントとのスムーズなコミュニケーションに役立っています。
少数精鋭を掲げているプラスデザイン株式会社では、経理担当者が3Dプリンター操作を習得し、耐久性に課題があった従来のスチレンボードによる模型製作から3Dプリンターでの造形に切り替えました。
導入後は高精度な模型を複数製作できるようになり、依頼者と建築会社との共通認識の形成に大きく貢献しています。
活用事例②3Dプリンター住宅|セレンディクス株式会社
近年、3Dプリンター技術を用いた住宅建設が世界的な注目を浴びており、日本国内でも建築基準法に準拠する住宅が次々に出現しています。
セレンディクス株式会社が開発した「serendix50」は、建築基準法に適合した壁式鉄筋コンクリート造3Dプリンター住宅として検査済証を取得しました。「serendix50」は、基礎部分に3Dプリンターで製作した部材を使用することで、従来の型枠工事を必要としない画期的な工法を実現しています。
ファッションアイテムでの3Dプリンター活用事例
3Dプリンターは、ファッションアイテムでの応用も広がっています。
以下に、ジュエリーとシューズでの活用事例を紹介します。
活用事例①ジュエリー製作スクール|株式会社アミュール
ジュエリー業界では、3Dプリンターの柔軟なデザインが注目されています。
株式会社アミュールは、デザインから製造、販売に至るまで一貫して行うジュエリーメーカーです。同社が運営する3Dモデリングスクールでは、3Dモデリングとともにジュエリーデザイナーの養成も行っています。
同スクールでは、3DCADと3Dプリンターを用いた試作を可能にし、高価な材料を使う前にデザインを検証できる環境を提供することで、ハイブリッドジュエラーの育成に貢献しています。
活用事例②シューズ制作|DIOR
3Dプリンターは、シューズのフィット感やデザイン性向上にも貢献しています。
3Dプリンターの活用により、複雑な曲面や滑らかなフォルム、独特の格子模様など、自由度の高いデザインを実現しました。
DIORのチーフメンズフットウェアデザイナー・Thibo Denis氏は、2023年初頭に3Dプリンターを使いアーティスティックなシューズを制作。パリファッションウィークで披露されたダービーブーツとミドルカットブーツは、その前衛的なデザインで一躍注目を集めました。
スイーツでの3Dプリンター活用事例

3Dプリンターは、スイーツ制作の現場でも新しいアイデアや独創的な作品を生み出しています。
以下では、スイーツのデザイン性向上、コスト削減に貢献した活用事例を紹介しましょう。
活用事例①精密コーティングのチョコレート製造|FoodJet社
3Dプリンターは、デザインデータの保存・再利用機能により、スイーツ製造における工程の標準化と人件費の削減を実現しています。
オランダのFoodJet社は、既存の製造ラインに3Dプリンターを使った装飾・コーティングシステムを取り入れ、従来では実現困難だった複雑なデザインのチョコレートを効率的に生産することに成功しました。
同社は、この技術をチョコレートだけではなく、ドーナツやワッフル、ビスケットなど、多様な食品へ応用しています。
活用事例②スイーツ専用3Dプリント|ナショナルデパート株式会社
3Dプリンターは、スイーツの表面的なデザインだけではなく、構造部分においても活用されています。
ナショナルデパート株式会社が開発した「Topology」は、複数の食材を継ぎ目なく射出できるスイーツ専用3Dプリンティングシステムです。
一つのスイーツに複数の食材を連続で堆積することで、美しい断面と独自の味わいを持つ個性的なスイーツ制作を実現しました。このシステムは、スポンジケーキのような固形物も液状化して射出できるのも特徴的です。
3Dプリンターで作れないものは?
上記の活用事例で紹介したように、医療機器やジュエリー、スイーツなど幅広く使える3Dプリンターですが、どのようなものでも作れるわけではありません。以下では、3Dプリンターで作れないものについて解説します。
技術的制限
3Dプリンターは、その技術的な特性から、製作できる製品にいくつかの制限があります。
3Dプリンター独自の積層方式という特性上、複雑な形状や厚みが少ないモデル、完全な透明性を持つ製品の製作は困難です。
これらの制限は、3Dプリンターの精度や材料の特性に起因しており、今後の技術の発展によって徐々に改善されていくことが期待されています。
法的制約
3Dプリンターの利用には、様々な法律が関わってきます。
たとえば、公的記章・標章の無断作成、著作権や商標権の侵害、食品衛生法違反など、法に触れる行為は厳禁です。
3Dプリンターで製作したものを販売したり、配布したりする場合には、事前に法律に関する知識を十分に身につける必要があります。
倫理的問題
3Dプリンターは、その技術の進歩によって、倫理的な問題も浮上させています。
たとえば、銃器のように社会に悪影響を与えるものを製作することは、倫理的に問題となります。
個人情報保護の観点から、3Dスキャンデータを悪用するといった行為も避けましょう。
以下の記事は、3Dプリンターで作れないものについて詳しく解説しているので、3Dプリンターを使って作品制作をする前にぜひご一読ください。
3Dプリンターの活用事例についてまとめ
3Dプリンターは、製造現場から医療、教育、ジュエリーまで、その活躍の場は多岐にわたります。
本記事で紹介したように、3Dプリンターは種類も豊富で、用途によって最適な機種が異なるので、ご自身の目的や希望に合った機種を選ぶことが重要です。
3Dプリンターショップ「Fabmart」では、お客様のニーズに最適な3Dプリンターをご提案いたします。
3Dプリンター本体はもちろん、フィラメントや3Dスキャナーなど、周辺機器も幅広く取り揃えておりますので、3Dプリンターの導入をお考えの方は、ぜひお気軽に以下のページからお問い合わせください。





3Dプリンター
3Dスキャナー
3D切削加工機
材料
メンテナンス品
表面加工
















