最近では低価格かつ、使いやすい3Dプリンターが数多くあり、学校の授業でも3Dプリンターの導入が進んでいます。
3Dプリンターは、図形を理解するのを助けたり、ものづくりへの関心を持ってもらったりするのに便利です。
今回は学校の授業において3Dプリンターを使う方法や導入事例、授業におすすめの3Dプリンターを紹介します。
3Dプリンターを授業で使うには?
3Dプリンターを授業において活用するには準備が必要です。以下に、授業で3Dプリンターを使うための手順を説明します。
3Dプリンターに必要なものを準備する
3Dプリンターを使うためには、まずパソコンおよび3Dプリンター本体、造形に使用する材料(フィラメント)が必要です。また、3Dデータを作成するためのソフトウェアも必要となります。
3Dデータを入手/作成する
3Dプリンターで造形するためには、3Dデータを用意しなければなりません。3Dデータは、専用のソフトウェアを使って自分で作成することも、インターネット上からダウンロードすることも可能です。
授業で使いやすいように3Dプリンターの用のデータを作成する際は、こちらの記事を参考にするといいでしょう。
3Dプリンター対応のデータ形式に変換する
3Dデータを使用するには、3Dプリンターが読み込むことができる形式(STLやOBJなど)に変換しなければなりません。この変換は、3Dデータを作成したソフトウェアで行うことができます。
データを読み込んだ後は、3Dプリンターを操作するための制御データ(立体モデルを造形するために必要となるサポート部を追加して断面形状の作成をしたもの)を作成します。
造形条件を設定する
3Dプリンターで授業に使える立体モデルを作るには、造形条件を設定しておかなければなりません。これには、造形速度や温度、層の厚さなどが含まれます。
材料をセットする
3Dプリンターに造形に使用する材料をセットします。造形に使用する材料が、フィラメントと呼ばれる線状のプラスチックです。
またセットする際は、条件に合致したモデルが造形できるように造形プレートの高さや水平調整を行う必要があります。
造形する
すべての準備が整ったら、3Dプリンターを使って造形開始です。造形時間は、造形する物体の大きさや複雑さによります。
サポート部を除去する
造形が完了したら、サポート部を除去します。サポート部は、造形中に物体を支えるために必要な部分で、造形後は不要です。
立体モデルを仕上げる
サポート部を除去して、最後に行うのが立体モデルの仕上げです。これには、表面の滑らかさを改善するための研磨や、色をつけるための塗装などが含まれます。
モデリングコートと呼ばれる専用の道具を使用することで、表面が粗い造形物を短時間できれいに仕上げることが可能です。
3Dプリンターを授業で活用した事例
3Dプリンターは、様々な授業で活用されています。学校の授業における活用事例は以下の通りです。
活用事例①算数の授業での活用
南関町立南関第三小学校では、算数の授業で3Dプリンターを活用。生徒たちは、自分たちで考えた形状を3Dプリンターで造形し、その形状の体積を計算するという授業を行っています。
これまで立体モデルの作成に厚紙を使用していましたが、厚紙では条件に合った立体を作りにくいという問題がありました。
そこで3Dプリンターを授業に活用することで、課題のモデルを作成しやすくすることに成功。立体の体積を計算する時に、空間的な見方を働かせ、図形を構成する要素を見つけやすくするツールとして活用されています。
活用事例②地学の授業での活用
板橋区中台中学校では、地学の授業で3Dプリンターを活用。生徒たちは、3Dプリンターを使って火山の模型を造形し、その模型を使って火山の噴火メカニズムを学んでいます。
3Dデータに関しては、国土地理院による無料の日本全土の3Dプリンタ用データを使用しているため、モデルの作成は難しくないとのことです。
また同校では今後、生物の授業では頭骨標本の造形での活用も検討されています。
日本での活用事例⓷シャープペンシル自販機心臓部品の作成
兵庫県立豊岡高等学校では、技術家庭科の授業で3Dプリンターを活用。生徒たちは、3Dプリンターを使ってシャープペンシル自販機の心臓部品を作成し、その部品を使って自販機を組み立てています。
授業時間内での出力が難しかったものの、印刷準備から立体モデル作成までスムーズに行うことができたとのことです。
授業で使えるおすすめの3Dプリンター
授業で使う3Dプリンターとしては、FLASHFORGEのCreator3 Proがおすすめです。この3Dプリンターは、操作性が良く、教育現場での使用に適しています。
最大の特徴は独立式のデュアルヘッド。左右に稼働するヘッドにより、複雑な立体モデルも造形可能です。ヘッドセットをアップグレードしているため、従来モデル以上の品質を実現しています。
さらにデュアルヘッドファンを搭載。モデルとラジエーターを素早く冷却し、安定した造形が可能です。
また停電回復機能にも優れており、電源が復旧してから速やかに印刷を再開できます。
造形マテリアル | PLA / ABS / PA / PC / PVA / HIPS / PETG / PETG-CF / PA-CF / TPU(0.8mmノズル使用時) |
最大造形サイズ | 300×250×200 mm |
積層ピッチ | 0.05~0.3mm |
授業に3Dプリンターを導入する際によくある質問
3Dプリンターを授業で使うことを考えている教員の方々からは、以下のような質問がよく寄せられます。
3Dプリンターの学校の授業における効果は?
3Dプリンターを授業で使うことで、生徒たちは自分たちのアイデアを形にする経験を得ることができます。
また、3Dプリンターで課題に合致した立体モデルを作ることで、複雑な図形を分かりやすくすることができるでしょう。
特に小学校の算数の授業では円錐や三角錐、円などを立体を説明するのが難しいとされています。
3Dによる立体モデルがあれば、視覚的に分かりやすく説明することができるでしょう。
また図画工作や美術の授業でも立体モデルの作成で3Dプリンターは役に立ちます。
教員にとって3Dプリンターの技術は難解か?
3Dプリンターの操作自体は、比較的簡単です。しかし、3Dデータの作成や、造形条件の設定などは、初めての方には難しく感じるかもしれません。
しかし、 Creator3 Proをはじめ多くの3Dプリンターには、初心者向けのガイドやサポートが用意されていますので、安心して始めることができます。
あらかじめ使用方法に関する講習の機会を設けると、スムーズに授業で3Dプリンターの導入が進められるでしょう。
3Dプリンターの取り扱い説明書やインターネットのサイトの解説記事などを参考に、実際に手を動かしてモデルを作成することで使用方法を習得できます。
授業での3Dプリンター導入・維持にコストはかかるか?
3Dプリンターの導入には、初期投資として3Dプリンター本体の購入費用が必要です。また、維持には、フィラメントの購入費用や、部品の交換費用などが必要となります。
しかし、これらのコストは授業での活用度によりますので、学校での使用目的に合わせて最適な3Dプリンターを選びましょう。
3Dプリンター本体の価格相場についてはこちらの記事で解説しています。
3Dプリンターを授業で使うまとめ
3Dプリンターは、操作方法が簡単であり、様々な授業で活用することが可能です。3Dプリンターを使うことで、自分たちのアイデアを形にしたり、課題に沿ったモデルを作成したりすることができます。
算数の授業であれば3Dプリンターを使うことで、2次元モデルでは理解することが難しい図形の理解を深められるでしょう。教育現場での3Dプリンターの活用を、ご検討ください。