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3Dプリンターで金属加工を簡単に!金属3Dプリンターの造形方式や導入ポイントを解説

【2025】3Dプリンターで金属加工を簡単に!金属3Dプリンターの造形方式や導入ポイントを解説

製造業界の金属加工の現場は、コスト削減や短納期化、複雑形状への対応など、常に課題が山積みでしょう。そんな中、革新的な技術として注目を集めているのが金属3Dプリンターです。

しかし、「本当に導入する価値があるのか?」「どんなメリット・デメリットがあるのか?」と疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。

本記事では、金属3Dプリンターの造形方式や使用可能な素材、導入時のポイント、活用事例などを詳しく解説します。

金属加工できる3Dプリンターとは?

金属3Dプリンターとは、金属粉末やワイヤーなどの金属材料を用いて、3次元データに基づき立体物を造形する装置です。

従来の切削加工や鋳造とは異なり、材料を一層ずつ積み重ねて形状を形成する「積層造形(Additive Manufacturing)」技術を採用しています。

これにより、複雑な内部構造や軽量化を目的としたデザインの実現が可能となり、製造業における革新的な加工方法として注目されています。

金属3Dプリンターで作れるもの

金属3Dプリンターは、従来の加工技術では製造が難しかった複雑な形状や内部構造を持つ部品の製作が可能です。たとえば、熱交換器のウェーブ状パイプや、ジェネレーティブデザインを用いた軽量化部品などが挙げられます。

また、ハニカム構造やメッシュ構造などの中空化デザインも容易に実現でき、部品の軽量化と強度確保を両立します。さらに、複数の部品を一体化して造形することで、組み立て工程の削減や性能向上が期待できます。

金属3Dプリンターについては、以下の記事でも解説しています。ぜひ参考にしてください。

金属3Dプリンターとは?仕組みと造形方式、おすすめの機種を解説

3Dプリンターで金属加工する際の造形方式

3Dプリンターで金属加工する際の造形方式

金属3Dプリンターは、金属材料を用いて3次元データから立体物を造形する装置であり、主に以下の6つの造形方式が存在します。

造形方式 説明 特徴 適用分野
パウダーベッド方式(PBF)
  • 金属粉末を敷き詰め、レーザーや電子ビームで溶融
  • 層ごとに積層して形状を形成
  • 高精度・高品質
  • 造形速度は遅い
  • 装置・材料コストが高い
航空宇宙、医療分野
ディレクトエネルギー堆積法(DED)
  • 金属粉末やワイヤーにレーザーを照射しながら積層
  • 高速造形
  • 大型部品や修復に適する
  • 精度はPBFより劣る
航空宇宙、自動車
バインダージェット方式(BJ)
  • 金属粉末に結合剤を噴射して層を形成
  • 焼結工程で固化
  • 高速造形
  • 大量生産に適する
  • 強度が他方式より低い
自動車、消費財
熱溶解積層方式(FDM)
  • フィラメントを溶融し、層ごとに積層
  • 低コスト・操作が容易
  • 精度や強度が劣る
試作、教育
ADAM方式
  • バインダー入りフィラメントを使用し、焼結で固化
  • 高密度部品が得られる
  • 焼結時の収縮を考慮する必要
試作、小ロット生産
WAM方式
  • 金属ワイヤーを溶接アークで溶融し積層
  • 高速造形
  • 材料コストが低い
  • 精度や表面品質が劣る
造船、建築

パウダーベッド方式(PBF)

パウダーベッド方式(PBF:Powder Bed Fusion)は、金属粉末を薄く敷き詰め、その上からレーザーや電子ビームを照射して選択的に溶融・凝固させる方法です。このプロセスを繰り返し、層ごとに積層して立体物を形成します。

高い造形精度と優れた表面品質が特徴で、複雑な形状の部品製造に適しています。ただし、造形速度が遅く、装置や材料のコストが高い点が課題です。主に航空宇宙や医療分野での高精度部品の製造に利用されています。

ディレクトエネルギー堆積法(DED)

ディレクトエネルギー堆積法(DED:Directed Energy Deposition)は、ノズルから供給される金属粉末やワイヤーにレーザーや電子ビームを同時に照射し、溶融・凝固させながら積層する方法です。

高速な造形が可能で、大型部品の製造や既存部品の修復に適しています。しかし、PBF方式に比べて造形精度や表面品質が劣る場合があります。主に航空宇宙や自動車産業での大型構造部品の製造や補修に活用されています。

バインダージェット方式(BJ)

バインダージェット方式(BJ:Binder Jetting)は、金属粉末に液体の結合剤(バインダー)を噴射して層を形成し、その後焼結して固める方法です。高速での造形が可能で、大量生産や複雑な形状の部品製造に適しています。

しかし、焼結工程での収縮や変形が生じる可能性があり、最終製品の強度が他の方式に比べて劣る場合があります。主に自動車産業や消費財の大量生産に利用されています。

熱溶解積層方式(FDM)

熱溶解積層方式(FDM:Fused Deposition Modeling)は、金属粉末を含むフィラメントを加熱・溶融し、ノズルから押し出して一層ずつ積み重ねて造形する方法です。比較的低コストで導入でき、操作も容易なのが特徴です。

しかし、造形精度や強度は他の方式に比べて劣る場合があります。主にプロトタイプの制作や教育分野での利用が一般的です。

ADAM方式

ADAM(Atomic Diffusion Additive Manufacturing)方式は、金属粉末とバインダーを混合したフィラメントを用いて造形し、その後脱脂・焼結工程を経て最終製品を得る方法です。

FDM方式と似ていますが、最終的に高密度の金属部品が得られる点が特徴です。比較的低コストで複雑な形状の部品製造が可能ですが、焼結工程での収縮を考慮した設計が必要です。主に試作品や小ロット生産の制作に適しています。

WAM方式

WAM(Wire Arc Additive Manufacturing)方式は、金属ワイヤーを溶接アークで溶融しながら積層する方法です。高速での造形が可能で、大型部品の製造に適しています。材料コストが低く、既存の溶接技術を応用できる点が利点です。

しかし、造形精度や表面品質は他の方式に比べて劣る場合があります。主に造船や建築分野での大型構造物の製造に活用されています。

金属3Dプリンターで使える素材

素材 特徴 適用分野
チタン合金
  • 高強度・軽量
  • 耐食性が優れる
  • 航空宇宙
  • 医療(人工関節、インプラント)
アルミニウム合金
  • 軽量
  • 熱伝導性が高い
  • 自動車
  • 電子機器
ステンレス鋼
  • 耐食性が高い
  • 機械的強度が良好
  • 食品加工機器
  • 建築
ニッケル基合金
  • 高温耐性が優れる
  • 耐食性が高い
  • 航空エンジン部品
  • 化学プラント
コバルトクロム合金
  • 耐摩耗性が高い
  • 生体適合性に優れる
  • 歯科用インプラント
  • 医療器具

金属3Dプリンターでは、さまざまな金属材料が使用可能です。代表的なものとして、チタン合金、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル基合金、コバルトクロム合金などが挙げられます。

これらの材料は、それぞれ特有の物理的・化学的特性を持ち、航空宇宙、自動車、医療など多岐にわたる分野での部品製造に適しています。

選択する材料は、最終製品の用途や要求される特性に応じて決定されます。金属3Dプリンターの技術進展に伴い、使用可能な材料の種類も増加しており、これによりさまざまな製品開発が可能となっています。

3Dプリンターで金属加工するメリット

3Dプリンターで金属加工するメリット

金属3Dプリンターは、さまざまな産業分野で活用されており、そのメリットを最大限に活かした製品開発や生産プロセスの効率化が進められています。以下、それぞれのメリットについて詳しく説明します。

  • 複雑な形状でも造形できる
  • 材料の節約につながる
  • 短納期での試作ができる

複雑な形状でも造形できる

金属3Dプリンターは、従来の加工方法では製造が難しかった複雑な形状や内部構造を持つ部品の造形が可能です。

金属3Dプリンターの積層造形技術により、材料を一層ずつ積み重ねて形状を形成するため、工具の使用が困難な内部チャンネルや中空構造、オーバーハングなどのデザインも実現できます。

これにより、製品の機能性向上や軽量化、部品点数の削減につながり、設計の自由度を大幅に高められるでしょう。たとえば、複雑な冷却経路を持つ金型や、軽量化が求められる航空機部品などでの活用が進んでいます。

材料の節約につながる

金属3Dプリンターは、必要な部分にのみ材料を配置する積層造形方式を採用しており、従来の切削加工のように素材を削り出す方法と比較して、材料の無駄を大幅に削減できます。

特に高価な金属材料を使用する場合の経済的なメリットは大きいでしょう。また、材料の節約は環境への配慮にもつながり、将来に渡って持続可能な製造を実現できます。

短納期での試作ができる

金属3Dプリンターは、デジタルデータから直接造形を行うため、金型の製作が不要であり、試作品の製作期間を大幅に短縮できます。

これにより、製品開発の初期段階での迅速なプロトタイピングが可能となり、設計の検証や市場投入までの時間を短縮できます。

また、設計の変更も容易に行えるため、開発プロセスの柔軟性が向上します。競争が激化する市場環境において、製品開発のスピードと品質を両立させる上で大きな利点となるでしょう。

3Dプリンターで金属加工するデメリット

3Dプリンターで金属加工するデメリット

金属3Dプリンターは、多くのメリットがある一方で、導入や運用に際していくつかのデメリットも存在します。以下に主なデメリットを紹介します。

  • 導入コストが高い
  • 造形サイズの制約がある
  • 後処理が必要

導入コストが高い

金属3Dプリンターの導入には高額な初期投資が必要です。装置自体の価格は数千万円に及ぶことがあり、さらに運用に必要な材料費やメンテナンス費用も高額です。

また、操作や保守に関する専門知識を持つ人材の育成や、適切な設置環境の整備など、追加コストも考慮しなければなりません。これらのコストは、小規模の事業者にとって導入のハードルとなる可能性があるでしょう。

造形サイズの制約がある

金属3Dプリンターは、装置の造形エリアに制限があるため、大型部品の一体造形には不向きな場合があります。大型の製品を製造する際には、複数のパーツに分割して造形し、後で組み立てるケースもあります。

そのため、制作したい製品によっては手間と時間がかかる上に、接合部の強度や精度の確保が課題となることも考慮しなければなりません。

後処理が必要

金属3Dプリンターで造形された部品は、表面の粗さや寸法精度のばらつきが生じることがあり、最終製品として使用する前に後処理が必要となる場合があります。

具体的には、サポート材の除去、表面の研磨、熱処理などが挙げられます。後処理工程は追加の時間とコストを要し、製造プロセス全体の効率に影響を及ぼす可能性があります。

なお、金属3Dプリンターによる金属加工では、後処理工程を適切に行うことで、造形強度を高められます。以下の記事にポイントをまとめているので、ぜひ参考にしてください。

【2025】金属3Dプリンターで造形した製品の強度を高めるには?造形方式ごとの特徴も紹介

金属3Dプリンター導入時のポイント

金属3Dプリンター導入時のポイント

金属3Dプリンターの導入時には、以下のポイントを押さえましょう。

  • 設置環境の整備
  • 技術者の育成
  • 費用対効果の検討

設置環境の整備

金属3Dプリンターの設置には、適切な環境整備が不可欠です。特に、金属粉末を使用する場合は、粉塵爆発や健康被害のリスクを低減するための防塵・防爆対策が求められます。

また、レーザーや電子ビームを使用する装置では、排気設備や冷却システムの導入が必要です。さらに、装置の重量や振動を支えるための床強度の確認や、安定した電源供給も重要です。

環境整備には、追加の工事費用や時間がかかる可能性があるため、事前に計画と予算を綿密に検討しましょう。

技術者の育成

3Dプリンターでの金属加工やメンテナンスには、専門的な知識と技術が求められます。新しい造形方式や材料特性、後処理工程など、従来の製造技術とは異なるスキルが必要です。

そのため、導入前に技術者の育成計画を立て、メーカーや専門機関が提供するトレーニングプログラムを活用するとよいでしょう。

費用対効果の検討

金属3Dプリンターの価格は、造形方式や性能、メーカーによって大きく異なります。たとえば、FDM方式のデスクトップ型は10万円程度から導入可能ですが、PBF方式などの高性能機種は数千万円以上となる場合もあります。

また、装置本体の価格に加え、付帯設備の導入や設置工事、材料費、メンテナンス費用などのランニングコストも考慮する必要があります。総費用と製造効率の向上や新製品開発による収益増加などの効果を比較し、投資の妥当性を評価することが重要です。

場合によっては、出力代行サービスの利用や、既存の製造方法との併用も検討するとよいでしょう。

なお、TECH MARTでは、産業用3Dプリンターの販売・導入支援を行っております。金属3Dプリンターの導入には、専門的な知識が必要となるため、プロにご相談いただくことをおすすめします。

金属3Dプリンターの活用事例

ここでは、3Dプリンターでの金属加工が主流になっている業界での具体的な活用事例を紹介します。

自動車業界

自動車業界では、金属3Dプリンターを用いて試作部品の迅速な製造や、軽量化・高性能化を目指した複雑な形状部品の製造が行われています。

たとえば、エンジン部品や排気系統のコンポーネントなど、従来の製造方法では困難だった形状の部品を短期間で製作し、車両の性能向上や燃費改善に寄与しています。また、製造プロセスの効率化やコスト削減にもつながっています。

航空宇宙産業

航空宇宙産業では金属3Dプリンターを活用して、軽量かつ高強度な部品の製造が進められています。

たとえば、エンジンの燃料噴射器や衛星用アンテナブラケットなど、複雑な内部構造を持つ部品の一体成形が可能となり、部品数の削減や性能向上を実現できます。

医療分野

医療分野では、患者個々の骨格やニーズに合わせたインプラントの製作に金属3Dプリンターが利用されています。

たとえば、人工関節や歯科用インプラントなど、個別の解剖学的形状に適合した医療デバイスの製造が可能となり、手術の精度向上やリハビリ期間の短縮が期待できます。

また、生体適合性の高い材料を使用することで、患者の負担軽減にもつながっています。

金型製造

金型製造においては、金属3Dプリンターを用いて冷却水管を内蔵した金型の製作が可能となり、成形品の品質向上や生産効率の改善が図られています。

従来の製造方法では困難だった複雑な冷却チャンネルの設計が可能となり、成形サイクルタイムの短縮や製品の寸法精度の向上を実現しています。

3Dプリンターを活用した金属加工まとめ

金属3Dプリンターは、複雑な形状の部品製造や軽量化、高精度が求められる分野で活躍しています。主に自動車、航空宇宙、医療、金型製造などの分野で採用され、製造効率の向上やコスト削減、短納期での製品開発を実現しています。

一方で、導入コストや後処理の必要性、造形サイズの制約などの課題も存在します。これらを踏まえ、適切な導入計画と技術者の育成を行うことで、3Dプリンターでの金属加工における新たな可能性を切り開けるでしょう。

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