3Dプリンターは3Dデータなどをもとに材料を一層ずつ積み上げていき。しかし、造形方式には種類があり「造形できるモノ」「使える材料」は大きく変わります。
3Dプリンター導入を検討しているのであれば、どの種類が想定している用途に適しているのかを確認しなければなりません。理解せずに購入をすると自分が想定していたモノと大きくかけ離れた完成系になるでしょう。
そこで、本記事では、3Dプリンターの種類の概要やメリット・デメリット、造形物の精度を決める要素について詳しく解説します。
3Dプリンターの種類とは?
ここでいう種類は造形方式を指します。つまり、造形物を製作する際に「どのような作り方を使用するのか」です。
この方式によって、造形されるモノの「精度」「強度」「開発期間」などは異なります。
本記事で紹介する主な種類としては、
- 熱溶解積層方式
- 光造形方式
- インクジェット方式
- 粉末焼結方式
- 粉末固着方式
があります。それぞれにメリット・デメリットは存在しますが、作成した造形物や条件によって選び方は異なります。
3Dプリンターの選び方は「価格」や「サイズ」などで購入を検討する方も多いですが、造形方式は最も重視するポイントです。
3Dプリンターの仕組みとは?
3Dプリンターの仕組みは非常にシンプルで材料を一層一層積み上げていき高さのある造形物を作成します。
主に樹脂を使用する「樹脂3Dプリンター」と金属を使用する「金属3Dプリンター」があります。元々は樹脂のみしか扱えませんでしたが、金属が使用できることで作成できるモノは大きく増加しました。
様々な種類がありますが、基本的に層を重ねていき造形することに変わりはありません。3Dプリントの主な順序は以下の通りです。
- プリントしたデータを作成
- 3Dプリントできるデータに変換
- 造形物を作成
造形物を作成する際に3Dプリンターだけではできず、3Dデータや3DCGソフトウェアなどモデルデータが必要になります。そして3Dプリント専用データに変換する「スライスソフト」が必要になると覚えておきましょう。
3Dプリンターのデータの作成方法について詳しく知りたい方は下記記事も併せてご覧ください。
3Dプリンターの種類5選とメリット・デメリット
ここからは3Dプリンターの種類について下記5つを詳しく解説していきます。
- 熱溶解積層方式
- 光造形方式
- インクジェット方式
- 粉末焼結方式
- 粉末固着方式
3Dプリンターの種類1.熱溶解積層方式
加熱したノズルから材料を溶解、吐出しながら材料を積層していくのが熱溶解積層方式です。現在の3Dプリンターにおいて最も主流の方法でFDM・FFF方式と呼ばれることもあります。
材料費が安価でコストパフォーマンスが優れているのが特徴で他の種類と比較しても取り扱いやすく、初心者の方にもおすすめです。
メリット
熱溶解積層方式は本物の熱可塑性樹脂を使用できるため、強度・耐熱の高さが特徴で頑丈な造形物に向いています。また、使用できる樹脂の幅も広いことから用途も様々です。
デメリット
他の方式と比較して精度が荒く造形物の表面を滑らかに作成するのは難しいデメリットがあります。そのため、精度の高い造形物の作成には向いていません。
ただし、材料や装置も進化していることから以前よりも格段に解消されています。
3Dプリンターの種類2.光造形方式
光造形方式は液状の樹脂に紫外線を照射し、樹脂を硬化させていきながら積層していきます。各種類の中でも最も古い方式でSLA方式と呼ばれています。
最も古い造形方式のため、信頼性も高く光造形方式を採用した3Dプリンターも数多くあります。ただし、原材料となるポリマー液体は人体に害を及ぼす可能性もあるため、使用する際には十分な注意が必要です。
メリット
液体樹脂の使用により、表面が滑らかに仕上がり高精度な製作ができるでしょう。また、最も古い造形方式であるため光造形方式を採用している機種も多く、選択肢も多くあります。
デメリット
光造形は造形速度が遅く造形物の製作に時間がかかり材料コストが高くなりがちです。また、大量に生産することに向いておらずコスパフォーマンスも高いとは言えません。
3Dプリンターの種類3.インクジェット方式
インクジェット方式は印刷機の印刷方法を応用したモノであり、インクジェットヘッドから樹脂を噴射し、紫外線で照射し固めながら積層を行っていきます。
フィギィアなどに使用される方式で印刷したかのように高解像度なカラーで造形が可能です。
メリット
液体を噴出しているため表面が綺麗に仕上がり、高精度な作品に仕上げることができます。後から塗装を施す必要もないため、作業時間を短縮できるのもポイントです。複数の材料を扱う機種もあります。
デメリット
アクリル系の樹脂を使用するため、耐久性に問題があり壊れやすいのが特徴です。紫外線によって硬化する性質があるため変形しやすく管理が重要になります。
3Dプリンターの種類4.粉末焼結方式
粉末焼結方式は粉末の素材にレーザーを照らし焼結させる方式です。SLSとも呼ばれ、素材はナイロンを用いることが多くあります。また、金属なども取り扱うことができます。
材料が粉末であるため、取り扱いには注意しなければなりません。
メリット
複雑な形状にも対応可能なため造形するモノに幅があります。耐久性の高い造形物を製作できるため強度にこだわりたい方におすすめです。
デメリット
表面が粉っぽくなりやすく造形物の精度にこだわりたい場合は使用を避けた方が無難です。また、質感を求める人にも向いておらず、表面がザラザラの仕上がりになります。
3Dプリンターの種類5.粉末固着方式
粉末固着方式は粉末材料を敷き詰めた上に接着剤で固めていく方式です。この方式の最大の特徴は粉末材料に着色を行うことができます。
インクジェットと同様にフィギィアなどを作る際に使用されることが多く、高精度な作品を作る際におすすめの方式です。
メリット
製作の速度が早く、大量生産に向いています。また、材料費が安く抑えられるためコストパフォーマンスも高いと言えるでしょう。より材料費を安価に抑えたい方に向いています。
デメリット
衝撃に弱く破損しやすいのが特徴です。また完成品に表面にざらつきが残ることも多く仕上げをする必要があります。またインクジェット方式に比べるとカラーの鮮やかさは劣ります。
3Dプリンターの造形物の精度を決める要素
3Dプリンターで造形物を作成する際に精度が良くなるのはどの要素なのか、下記4つについて解説していきます。
- 積層ピッチ
- XY軸の解像度
- 造形物の反り
- 使用する材料
造形物の精度を決める要素1.積層ピッチ
積層ピッチとは造形物を作る際に材料を積み上げていく際の間隔を指します。ピッチが細かいほど造形物の精度は高くなります。これは、造形物の密度が高くなり仕上がりが細かくならないためです。
ただし、積層ピッチが薄ければ薄いほど良いと一概には言えません。ピッチが細かければ造形物の作成に時間がかかります。そのため、造形物を量産するのには向いていません。
造形物の精度を決める要素2.XY軸の解像度
XY軸の解像度とは、平面方向にどの程度詳細に表現可能かを示す指標を指します。解像度が高ければ、複雑な形状や滑らかな曲線など設計の詳細を再現できます。一方で解像度が低い場合は形状にズレが生じたりします。
XY軸の解像度は「DPI」および「mm」で表記されることが多く、DPIであれば数値が高い・mmであれば数値が低いほど精度は高いということになります。
造形物の精度を決める要素3.造形物の反り
3Dプリンターは造形の工程において、金属や樹脂などを加熱し溶解、冷却し造形を行います。熱溶解積層方式などは高温となる場合は造形物を冷却する段階で収縮・反りがでて精度に影響を及ぼします。
基本的には樹脂より金属の方が反りが少ないですが、条件や素材によって異なり反りが出るほど精度低下の影響が出ていしまいます。
造形物の精度を決める要素4.使用する材料
3Dプリンターで造形物を作成する際には「フィラメント」や「粉末素材」などを使用しますが、熱に強いものや伸縮性があるものなど素材によって様々です。使用する材料によって造形物の精度は異なります。
また、3Dプリンターも全ての材料を使用できるわけではありません。そのため、造形物の強度や柔軟性など何に比重を置くのかで決める必要があります。
3Dプリンターの種類でよくある質問
ここでは3Dプリンターの種類でよくある質問についてまとめてみました。
一番おすすめの種類は?
種類によって造形できるモノは異なるため、おすすめはありません。ただし、最もポピュラーである「熱溶解積層方式」や一番古い「光造形方式」を採用している3Dプリンターは多く、選べる機種の幅も広がります。
もし、3Dプリンターの選び方について迷った場合は下記記事も併せてご覧ください。
初心者におすすめの3Dプリンターは?
初心者に最もおすすめなのは熱溶解積層方式の3Dプリンターです。本記事で紹介した種類の中で最も安全に使用でき、材料も取り扱いやすいです。
本体価格や材料も比較的安価であるため、コストが優しいのも魅力です。3Dプリンターの購入ポイントについて詳しく知りたい方は下記記事も併せてご覧ください。
3Dプリンターでトラブルが起きた場合は?
3Dプリンターでトラブルが起きた場合には自分で解決しようとせずに購入先に連絡をしましょう。購入する際にサポート体制や保証期間など付与されていることもあるので、購入前には必ず確認しておきましょう。
3Dプリンターの種類で造形できるものは変わる
本記事では3Dプリンターの種類やそれぞれのメリット・デメリットについて解説しました。造形物によって3Dプリンターの種類は異なります。そのため、慎重に比較検討しましょう。
また、3Dプリンターの購入を検討しているのであれば「Fabmart」での購入がおすすめです。豊富な種類と数を取り揃えていますのでぜひご覧ください。