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金属3Dプリンターで造形した製品の強度を高めるには?

【2024】金属3Dプリンターで造形した製品の強度を高めるには?造形方式ごとの特徴も紹介

金属3Dプリンターの導入を検討している企業の中には、造形物の強度を気にする方も多いのではないでしょうか?
実際に数年前までは、複雑な形状も造形できる・手軽に造形ができるなどのメリットがある反面、造形強度が低いといったデメリットを抱えていました。

しかし、使用する金属の材質や造形の方法によって、製品の強度を高めることは可能です。すでに自動車や航空宇宙分野でのパーツを造形できるほどの強度を実現できています。

そこで、本記事では製品の強度を高めたいという方を対象に、金属3Dプリンターの強度を高める方法、造形方式ごとの特徴を解説します。

金属3Dプリンターの特徴

金属3Dプリンターの特徴

まずは、金属3Dプリンターの特徴について理解しておきましょう。主な特徴は以下の3つです。

  • 複雑な形状の造形ができる
  • 製造コストの削減
  • 製品を軽量化できる

複雑な形状の造形ができる

これまでの金属加工では難しいと言われていた複雑な形の造形も金属3Dプリンターで可能になります。一般的な加工である鋳造や切削で不可能だった「工具が入らない部分の加工」「型から取り出せない加工」も実現できます。

製造コストの削減

製作する部品数を減らすことができるため、その分製造コストを下げられるのは金属3Dプリンターの特徴です。従来では、数点の部品を組み合わせて製作していたモノも、金属3Dプリンターにより1点の部品を製作するだけで可能になります。

加工に携わる作業員も減らすことが可能になるため、人件費もカットできます。

製品の強度を自由にできる

金属3Dプリンターは強度や耐久性に優れた金属部品を作成できますが、用途によっては軽量化や強度を低くすることも可能です。樹脂3Dプリンターは強度を低くすることは可能でも、強度を極限まで高めることは金属に比べると難しいのです。

例えば、製品の強度を高める方法にHIP処理がありますが、樹脂3Dプリンターで使用する材料は熱収縮が起こりやすものも多く、反りができるため製品本来の形状を維持できなくなります。金属はそのような懸念点も少ないと言えるでしょう。

金属3Dプリンターについて詳しく知りたいという方は以下記事も併せてご覧ください。

金属3Dプリンターとは?仕組みと造形方式、おすすめの機種を解説

金属3Dプリンターにおける強度とは?

金属3Dプリンターにおける製品の強度とは、硬さだけではありません。強度と言うと、製品がどれだけ頑丈であるかをイメージする方が多くいます。

しかし、3Dプリンターにおける強度には、引っ張り力・耐熱力・耐久力・せん断力など様々です。強度が強い製品を作りたいと思っていても、どんな条件のある強度を作りたいのかによって、強度を高める方法は異なると言うことです。

ちなみに、全てにおいての強度を一定数値より高くできる素材やプリンターというのは存在しません。つまり、高めたい強度に適した造形方式や素材に適したものを選択する必要があるということです。

金属3Dプリンターで作れる強度の高いもの

金属3Dプリンターで作れる強度の高いもの

金属3Dプリンターで造形できる強度の高いものは以下が例として挙げられます。

  • ロケットや航空機の部品
  • エンジンの燃料噴射ノズル
  • 人骨インプラント

上記以外にも様々なものを造形できるのが、現代における金属3Dプリンターの技術です。

例えば、ロケットや航空機などは気圧の変化が激しいことから圧縮される力に耐える強度が必要です。また、エンジンの燃料噴射ノズルであれば高熱に耐える耐熱力が重要になります。

このように使用する状況に応じて、1つの強度に特化した製品を金属3Dプリンターで造形が可能です。

3Dプリンターで強度の高い作品については以下の記事でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

3Dプリンターで強度の高い作品を作れる?強度が高い材料やおすすめ製品を紹介

金属3Dプリンターの造形方式

金属3Dプリンターの造形方式

製品の強度を高めるためには、金属3Dプリンターにおける造形方式ごとの特徴を知っておきましょう。ここでは以下4つの方式の特徴について紹介します。

  • 熱溶解積層方式
  • デポジション方式
  • パウダーベッド方式
  • バインダージェット方式

方式①熱溶解積層方式

熱溶解積層方式は、樹脂プリンターでも採用されている造形方式であり一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。金属3Dプリンターでも原理は変わらず、熱で変形する「樹脂」と金属を混ぜて積層し、造形を行います。

ただし、この方式で使用される樹脂は「熱可塑性樹脂材料」を使用し、「脱脂」工程により抜く必要があるため後作業が必要になります。
また、熱可塑性樹脂材料によっては強度が低いものもあるため、製品の強度を高めたいのであれば熱可塑性樹脂材料の選択は重要になるでしょう。

方式②デポジション方式

デポジション方式は「指向性エネルギー堆積法」とも呼ばれ、粉末状にした金属を噴射しながらレーザーや電子ビームで溶かして固めて造形する部分に積み上げます。

耐久性が高いため「耐久力の強い製品を造形したい」「大型の造形物を造形したい」というケースで活用されます。ただし、表面のザラつきが目立ちやすく、製品によっては研磨や塗装などの後加工に大きな手間がかかる場合もあるでしょう。

方式③パウダーベッド方式

パウダーヘッド方式は金属3Dプリンターで最も採用されている機種が多い造形方式です。デポジション方式と造形の方式は似ており、金属粉末を敷き詰めレーザーや電子ビームを照射し積み上げて固めます。

パウダーヘッド方式は「一層ずつ溶かして固める」を繰り返すため造形に時間がかかることがデメリットですが、幅広い分野に使用できるといった特徴があります。

導入費用が高価になりやすく、表面の仕上がりは荒くなりやすいためデポジション方式同様に後加工は必要になるケースが多いでしょう。

方式④バインダージェット方式

バインダージェット方式は、バインダー(液体結合剤)と呼ばれるものを金属粉末に噴射して結合させ造形を行います。
スピードを重視した造形ができる一方で、製品の強度を高めることが難しいため製品に強度を求めるのであれば、不向きな造形方式です。

また、複雑な形状の造形も難しいため採用されている機種も少なく、限定的な使い方しかできないと言えるでしょう。

金属3Dプリンターの造形強度を高める方法

金属3Dプリンターの造形強度を高める方法

金属3Dプリンターで造形する製品の強度を高める方法は以下の4つになります。それぞれについて詳しく解説します。

  • 後処理による強化
  • データや造形方向の調整
  • 材料の選定
  • 充填率を高める

方法①後処理による強化

後処理による強化で製品の強度を高める方法があります。

方法は様々ですが、使用される頻度が多いのはHIP処理(熱間等方圧加圧)と呼ばれる熱処理です。この方法は、製品を高温の環境下で圧力を加え、製品の密度を高める、残留応力の除去などが可能になります。

また、造形物によってはネジ穴がある製品もありますが、ネジ穴は何度も脱着を繰り返せば欠けてしまうこともあるのです。そのため、インサートなどの後加工を部分的に施すことで耐久力を上げることができます。

このように、後処理によって強度を高めることは可能です。

方法②データや造形方向の調整

2つ目は造形方向の調整やデータを改善して強度を高める方法です。金属3Dプリンターで造形する際に造形方向を変更してみたり、造形の形状に少し変化を加えるだけでも強度は高くなる可能性が高いのです。

この方法はすぐに試すことができるだけでなく、強度を高めるための手間やコストもかからないため有効な手段であると言えるでしょう。
近年では、AIが造形中に品質を監視しリアルタイムで教えてくれる金属3Dプリンターの開発も進んでいます。

方法③材料の選定

製品の強度を高めるのであれば、最も重要となるのが材料の選定です。金属3Dプリンターで使用できる材料には、チタンやニッケル合金、アルミニウム、ステンレスなど強度が非常に強いものもあれば低いものも存在します。

ここでは、金属3Dプリンターで使用できる材料の中でも特に強度の強い材料以下3つ紹介します。

  • チタン合金
  • アルミ合金
  • コバルト基合金

チタン合金

チタン合金は航空宇宙分野でも使用される程の強度を持ち、軽量で錆びにくい特徴があります。特に引張強度(引っ張る力)が優れており、電気や熱を通しにくい性質を持つことから強度の高い製品を作る際の材料として最適と言えるでしょう。

アルミ合金

アルミ合金は、強度が低い純アルミから最も強度が高いと言われるAl-Zn-Mg系までがあります。強度や硬度が高いことが特徴で、最も硬度が高いAl-Zn系のアルミ合金は航空機や鉄道車両構造材にも使用されています。

コバルト基合金

コバルト基合金は、コバルトやクロムなどのレアメタルを使用した合金です。優れた高温強度、耐酸化性、耐久性、耐摩耗性があり、2000℃の高温においても特性の変化はほとんどありません。航空機、船舶部品等で使用されます。

上記で紹介した材料以外にも強度が高い素材は数多くあります。それぞれの材料でどのような強度に秀でているかは異なるため、特性などを理解して使用しましょう。

方法④充填率を高める

充填率とは、完成した製品の内部密度を指します。

例えば、充填率0%の場合、内部密度は空洞であるため強度は非常に弱くなります。一方で、充填率100%の場合、内部密度は高いため強度は高いということです。

充填率を高める方法は様々ですが、先述したHIP処理(熱間等方圧加圧)も充填率を高める方法の1つです。
ただし、充填率を高め強度を高くする方法は、熱収縮が起こりにくい材質にのみ有効であり、熱収縮が起こりやすいABSやナイロンは反りが起こりやすくなり製品自体の形状が変化します。

そのため、金属3Dプリンターでも樹脂材料と金属を混ぜて使用する製品には注意が必要です。

金属3Dプリンターの強度についてのまとめ

金属3Dプリンターの強度についてのまとめ

本記事では、金属3Dプリンターで造形した製品の強度を高める方法について詳しく解説しました。

製品の強度と一言でいっても種類は様々であり、すべての強度を高めることはできません。そのため、高めたい強度を決定しどのような施策があるのかを理解することが重要です。

そして、材料の選定や後処理などは強度を高める上で有効です。本記事を参考に製品の強度を高めてみてはいかがでしょうか。

また、金属3Dプリンターの導入を検討している方は3Dプリンター専門ショップ「Fabmart」での購入を検討してみてはいかがでしょうか。

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