「3Dプリンターで使用するゴムフィラメントの特徴とは?」と疑問に思う方も多いでしょう。熱溶解積層方式で使用されるフィラメントは、強度や柔軟性に優れているなど様々な特性を持つものがあります。
中でもゴムフィラメントは多様な特徴を持っており、様々な用途で使用できます。しかし、特徴を理解せずに使用すると造形物の品質を低下させる原因となります。
そこで本記事では、ゴムフィラメントの概要をはじめ、特徴、メリットやデメリット、注意点など詳しく解説します。ゴムフィラメントを適切に使用するために本記事を最後までご覧ください。
ゴムフィラメントとは?
ゴムフィラメントは、柔軟性に優れたフィラメントの1種です。TPU(熱可塑性ポリウレタン)やTPE(熱可塑性エラストマー)で作られ、ゴムのような弾力性を持ちます。
主に耐衝撃性が求められるプロトタイプや部品に使用され、靴底や防振パーツなどに使用されることが多いです。ただし、ゴムフィラメントを使用して造形物を作成するのは、初心者には難しく高度な技術が必須になります。
フィラメントについては以下の記事でも詳しく解説していますので、参照ください。
3Dプリンターにおけるゴムフィラメントの特徴
ゴムフィラメントは主に以下のような特徴を持っています。
- 柔軟性
- 耐久性と弾性
柔軟性
ゴムフィラメントの最大の特徴とも言えるのが柔軟性です。TPUやTPEなどの熱可塑性ポリウレタンを基にしており、伸びやすい特性を持っています。
ゴムフィラメントを使用して作成された造形物は外部からの力が加わった際に変形しやすく、元の形状に戻る能力も高いです。衝撃吸収性や振動緩和効果が得られるため、自動車部品やスポーツ用品、さらには靴の底材など、特に負荷がかかる環境下での使用に最適と言えるでしょう。
耐久性と弾性
ゴムフィラメントは耐久性と弾性が高い特徴も持っています。
耐久性は強い衝撃が加わった時に耐える力、弾性は力が加わった際に変形、力が取り除かれた後に元の形状に戻る能力を指します。ゴムフィラメントは通常のフィラメントと比較して摩耗や引っ張りに対する抵抗力が高く、長期間にわたって使用できる強靭さを持っており、衝撃や圧力に耐える力も強いと言えるでしょう。
ゴムフィラメントの種類
ゴム系のフィラメントは主に以下4つの種類に分けられます。
- TPU
- TPE
- TPC
- PBAT
上記の4種類は、耐摩耗性/耐衝撃性/耐薬品性/引張強度/靭性・曲げ疲労性の特性を持っています。ただし4種類の素材がバランスよく特性を持っているわけではありません。
例えば、TPCは耐熱性に優れており、高温環境下でも安定した性能を持ちます。PBATは生分解性があり、環境への配慮が求められる用途で注目されています。
このようにそれぞれの特性を理解して用途に分けて使い分けましょう。
3Dプリンターにおけるゴムフィラメントのメリット
ゴムフィラメントを造形で使用するメリットは以下の3点です。
- 弾力性が高く衝撃吸収に優れている
- 柔軟で曲げやすい
- 耐摩耗性に優れている
弾力性が高く衝撃吸収に優れている
ゴムフィラメントは特にTPU(熱可塑性ポリウレタン)などの素材で作られていることが多く、外部からの力や衝撃を吸収します。そのため、造形物は落下や衝撃などに耐久性があり、破損しにくくなります。
また、ゴムフィラメントの弾力性は製品のフィット感や使用感を向上させる要因ともなります。靴などでゴムフィラメントが使用されるのはこの特性が利用しやすいためです。
柔軟で曲げやすい
柔軟性もゴムフィラメントの特徴です。柔軟性があることで、衣類やアクセサリー、靴など体にフィットするデザインが可能になります。また、電線の保護カバーや可動部品など使用時に曲げたり動かしたりする必要があるアイテムでも、耐久性を保つことができます。
柔軟で曲げやすい特性を持つゴムフィラメントは、造形物のデザインの自由度を高めることが可能になります。
耐摩耗性に優れている
ゴムフィラメントは、摩擦や擦れに対する抵抗力が高く、長期間使用しても劣化しにくい特性を持っています。例えば、使用中に頻繁に摩擦や接触が発生する自動車の部品やスポーツ用品に適した素材と言えるでしょう。
そのため、製品は長持ちすることから交換や修理の頻度を減らすことが可能になりコストを抑えることもできます。
3Dプリンターにおけるゴムフィラメントのデメリット
ゴムフィラメントはメリットが多いですが、デメリットもあります。ここでは以下3点のデメリットを解説します。
- 印刷の難易度が高い
- 精度が落ちる可能性がある
- 材料費が高くなる
印刷の難易度が高い
ゴムフィラメントは特性上、一般的なフィラメントと比較して印刷の難易度は高くなります。柔軟性の高い素材はノズルが詰まりやすく、造形中にフィラメント自体が変形することも。また、熱の影響を受けやすく冷却を正しく行う必要があります。
そのため、ゴムフィラメントを使用する際は適切な温度設定や印刷速度を調整する必要があります。高い技術が求められるため、初心者にとっては難しいと感じるでしょう。
精度が落ちる可能性がある
ゴムフィラメントは柔らかいためレイヤー間の接着が不完全になりやすく、造形精度が低下する可能性があります。また、印刷中の動きや振動によっても細部がぼやけたりずれたりすることがあり、特に高精度が求められるパーツではその影響を受けやすい傾向にあります。
造形物の精度を高く保つ場合は高品質のゴムフィラメントを選ぶなど対処しましょう。
材料費が高くなる
ゴムフィラメントは一般的なフィラメントと比べて価格は高い傾向にあります。また、ゴムフィラメントを使用して造形物を作成するとしても印刷中に不具合が生じる可能性が高く、フィラメントが無駄になることもあります。
そのため、ゴムフィラメントは大量生産や複雑な形状にあまり向いていないと言えるでしょう。
ゴムフィラメントを使用する際の注意点
ゴムフィラメントを使用する際は以下の2点に注意しましょう。
- ノズルの詰まりに注意する
- 造形速度を遅くする
ノズルの詰まりに注意する
ゴムフィラメントは、柔軟性と弾力性から通常のフィラメントと比較してノズル詰まりを引き起こしやすい傾向にあります。
ノズルの詰まりを引き起こさないためには「ノズル径を大きめに設定する」「定期的にメンテナンスを行う」など対策を行いましょう。
造形速度を遅くする
ゴムフィラメントは柔軟性と高い粘性から、印刷速度が速すぎると不安定になりノズル詰まりを引き起こす可能性があります。造形速度を遅くすることでフィラメントが均一にノズルを通過しやすくなり造形が安定します。
また、ゴムフィラメントに限らずですが造形速度を遅くすると造形物の精度は高くなりやすいです。造形物の品質を求める場合は、造形速度を遅くしましょう。
3Dプリンターでゴムフィラメントを使ってできるもの
ゴムフィラメントを使用してできるものについて以下3つを紹介します。
- スマートフォンケース
- 靴のソール
- 医療用器具
スマートフォンケース
スマートフォンケースはゴムフィラメントを使用して作成されます。スマートフォンケースで最も求められる条件として、スマートフォンを落下や衝撃から保護することです。ゴムフィラメントを使用することで軽量でありながら丈夫な仕上がりになるため、持ち運びにも適しています。
また、様々な色や質感で利用可能なため色々なデザインで作成することも可能です。また、最近ではスマートフォンを守るだけでなくカード収納など実用的な機能を備えるケースも発売されていますが、3Dプリンターで造形可能です。
靴のソール
ソールは歩行時の衝撃を吸収し足への負担を軽減する役割が必要です。そのため、クッション性や耐久性が求められますが、ゴムフィラメントは2つの条件をクリアすることが可能です。
また、3Dプリンターを使用することで足の形に完全にフィットするオーダーメイドのソールが簡単に作成でき、デザインの自由度も高いため靴のソールには適していると言えるでしょう。滑り止め機能や耐摩耗性も持っているためスポーツシューズなど激しい運動にも耐えることができます。
以下の記事では3Dプリンターで靴を作成する方法や事例について紹介しています。併せてご覧ください。
医療用器具
近年では、医療用器具にもゴムフィラメントが使用されています。例えば、患者の体に直接触れるマスクのパーツや装具、またリハビリ用のクッション材などの医療用器具を作成できます。
また、3Dプリンターの技術も向上していることから、患者ごとの身体に合ったオーダーメイドの器具を製造できるため、ニーズに合わせた医療器具が製作できるのです。薬品などの影響も受けにくいため、最適と言えるでしょう。
3Dプリンターのゴムフィラメントにおけるよくある質問
ゴムフィラメントのよくある質問についてまとめています。
フィラメントは純正品以外でも使えますか?
フィラメントはノズルやヘッドの温度が対応していれば、純正品でなくても印刷は可能です。ただし、場合によって機種の破損や造形物の品質が低下させる可能性もあります。
ゴムフィラメントは造形中悪臭を発生しますか?
臭いの強さはフィラメントの種類やメーカーによって異なりますが、ゴムフィラメントの臭いは比較的弱めです。ただし、個人差がありますので通気性の良い場所でのプリントや換気を心がけましょう。
3Dプリンターのゴムフィラメントについてのまとめ
本記事では、3Dプリンターで使用されるゴムフィラメントの特徴やメリット・デメリット、注意点を詳しく解説しました。
ゴムフィラメントは、柔軟性や耐久性に優れスマートフォンケースや靴のソール、医療用器具など様々な場面で活用されています。
しかし、ノズル詰まりや印刷精度の低下などの課題もあるため、使用時には適切な設定を心がけましょう。ゴムフィラメントが使用できる3Dプリンターを探している方は3Dプリンター専門ショップ「Fabmart」がおすすめです。業務用・家庭用問わず様々なプリンターを販売していますので、購入を検討している方はご覧ください。